婚姻費用 収入の認定認定、所得確認の方法とは
✅ 婚姻費用での収入認定はどのようにして行われるのでしょうか。
✅ 婚姻費用を算定するためには,どのような資料が必要でしょうか。
婚姻費用を算定する場合には,令和元年の婚姻費用養育費の算定表を使って算定をしていくことが多いでしょう。
婚姻費用養育費の算定表においては,それぞれの総収入を認定し,基礎収入の算定,それを生活費割合において配分をしていくといったことで計算がなされます。
そこでは,総収入をどのように認定していくのか大切となってきます。
このページでは,総収入をどのようにして算定していけばよいかの整理をしています。婚姻費用の調停を行う場合にどのような資料を確認できればよいかといったことを確認しておくとよいでしょう。
1 給与所得者の場合
給与所得者の収入金額を認定することは比較的簡単に算定をすることができます。
源泉徴収票の「支払総額」が総収入の認定とされることとなります。
したがって,給与所得者同士で婚姻費用の算定を行うためには,源泉徴収票を準備しておくことが大切です。
もっとも,別居離婚前の段階で,残業を減らすなどの収入を下げるといった場合があります。
そのため,数年分を残しておくと有利となる場合があり得ます。
また,複数の職場で働いている場合には,複数の源泉徴収票を揃えておくことが必要となります。
複数の職場で働いていることを見落とさないようにするためには,確定申告書や課税証明書を取得し,所得額を確認することで,源泉徴収のみの収入ではないことが確認できます。
2 自営業者の場合
自営業者の場合には,確定申告書を資料として取得しておくことが必要となります。
課税証明書により所得金額自体は確認できるのですが,確定申告では,税法上の様々な控除が行われていますので,控除分を加算した場合にどのような金額となるのかを算定する意味では,確定申告書を確認することが大切です。
自営業者については,支出内訳書を見るなどすると,経費や社会保険料等の控除がなされていることが確認できます。
婚姻費用・養育費算定表においても一定の修正がなされているため,確定申告書の「課税される所得金額」を参照することで一定の計算ができます。
もっとも,自営業者の場合には,実際には支出していない専従者給与などにより所得金額が修正されている場合がありますので,個別の修正が可能かどうかを確認していくことが必要です。自営業者が義務者である場合には,弁護士などに依頼をして,算定をされるとよいでしょう。
3 年金収入・失業保険の場合
年金収入については,公的年金等の源泉徴収票や年金振込通知書,年金額改定通知書等を集めておくことが必要です。
年金収入の場合には,年金の収入金額で直ちに算定してよいかといったには問題があります。難しい話となりますが,婚姻費用・養育費の算定表では,職業費(職業で必要となる経緯)を控除,修正して算定するといったものが使われた計算となっています。
したがって,年金収入の場合には,総収入から公租公課などを控除して算定することとなります。
4 収入が不明である場合・働けるにも関わらず仕事をしていない場合
当事者の収入資料がそろっておらず,不明となっている場合があり得ます。また,資料上は他にも収入があるにも関わらず,資料が提出されない場合があります。
これらの場合には,厚生労働省統計情報部の賃金センサスを利用して,収入金額を認定していくとの作業となります。
過去の収入から,勤務を続けて言えれば得べかりし収入を算定する場合や従前の生活実態から収入を推計していくといった方法もあり得るでしょう。
当事者が現実には仕事や稼働能力がありながら就労をしていない場合においても,賃金センサス等を使用して収入を推計する場合があります。もっとも,給与所得者の賃金センサスでは高額な金額となってしまうことがあり,短期間労働者の賃金センサスにて計算をしていくことが在り得るでしょう。
※ 子供が小さい場合には,就業のために時間的余裕がなく,潜在的な稼働能力がないと判断される場合があります。現実に,子どもが小さい場合など,なぜ就業ができないのかといったことを主張立証していくことが大切となってきます。
5 給与所得,自営業収入が算定表の収入を超える場合
算定表上での収入を超える数千万円の収入がある場合に,どこまでも婚姻費用が上がっていくわけではない点には注意が必要です。
当事者の一方に算定表を超える収入がある場合には,表の上限を収入として認定する場合があります。
6 収入とみられないもの 生活保護費,仕送り,児童扶養手当,児童手当
親族からの仕送りや児童扶養手当,児童手当などは,収入として扱うことが不適切であるとして,収入とはならないこととなります。
また,生活保護を受けている場合には,生活保護費は最低限度の生活を保障するもので,収入とみるわけではなく,婚姻費用認定の際には収入と算定しないこととなります。
現実には,収入には様々なものがあり,それを収入の認定に用いるかどうかについては争いがあるものも少なくありません。婚姻費用・養育費の算定において適正な金額を算定していきたいと希望がある場合には弁護士に依頼をするとよいでしょう。弁護士に依頼をされることで個別の資料,証拠を主張,立証していくことで適正な金額を算定していくことができるでしょう。婚姻費用・養育費の算定において,交渉・調停・審判を依頼されたい方はぜひ当事務所にご相談ください。
大阪弁護士会所属。立命館大学法学部卒・神戸大学法科大学院卒。数多くの浮気不倫問題、離婚問題を取り扱っている弁護士。関西地域にて地域密着型法律事務所を設立。