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住宅ローンの支払いで養育費を減額できないのでしょうか。養育費の計算方法は?

住宅ローンの支払いで養育費を減額できないのでしょうか。養育費の計算方法は?

(想定事例)
離婚をするにあたって、子どもが未成年の間には、私が住宅ローンを支払い続け、離婚した妻と子どもが自宅に住むとの条件を出してきました。しかし、相手方は養育費において、算定表の金額そのままを提案してきていまます。自分自身も住む場所を確保しなければならず、住宅ローンを支払ってるので算定表記載の金額を支払う場合には、かなり苦しくなってしまいます。
住宅ローンの支払いをしていることは、養育費の算定で考慮されないのでしょうか。

弁護士の回答
① 住宅ローンの支払いは資産の形成の側面があるため、財産分与で考慮されるべき事項であるとして原則は、考慮されないと考えられます。そのため、当然に住宅ローンの相当額が減額されるわけではありません。
② もっとも、夫婦での共同負債を義務者のみが負っているとして、義務者の収入認定において、住宅ローンを特別経費として控除して、計算をする方法といったものが考えられます。
③ また、住宅ローンの支払いをすることで現実に住居費の負担を免れている場合には、住居費相当額の支払いを考慮し、算定表の金額から住居費(家賃)相当額を差し引くなどの方法によって考慮することで減額する方法があり得るでしょう。

1 養育費とは何か

民法877条1項によれば、直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務があるとして、直系血族には扶養義務があることを規定しています。

離婚をしたとしても、子どもとの関係では親であることは変わりがないため、未成熟の子どもが生活をするために必要な費用を支払わなければなりません。

そこで、必要な費用の義務履行を求めるために、監護親(多くは、親権者、子どもと同居をして監護をしている側の親と考えてください)は、非監護親(子どもと同居をしておらず現実に監護はしていない側の親)に対して、監護費用(民法766条)・養育費請求を請求していくことが考えられます。

養育費の支払義務は、義務者と同程度の生活をさせる生活保持義務であるため、それぞれの総収入、基礎収入を認定し、子どもの生活費を算定し、それぞれの負担すべき養育費の分担金額を定めていくこととなります。
平成15年4月以降には、東京・大阪養育費等研究会により「簡易迅速な養育費等の算定を目指して―養育費・婚姻費用の算定方式と算定表の提案」(判例タイムズ1111号285頁以下)が公表されて以降は、義務者・権利者の実際の収入金額を認定し、養育費を定めていくといったことがなされています。

また、算定表については平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の研究報告が令和元年12月23日に公表され、標準算定表・算定表(令和元年版)が利用されています。社会経済状況の変動を踏まえて、従来のものよりも1~2万円程度増額されたものが提案されています。

したがって、実際には、裁判所で公表されている養育費・婚姻費用算定表を利用して、お子さんの人数、年齢と収入の金額を見て、金額を定めていくことが多いでしょう。

平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について
https://www.courts.go.jp/toukei_siryou/siryo/H30shihou_houkoku/index.html

2 住宅ローンについて考慮される場合とは

(1)住宅ローンを支払っている住宅に権利者・子どもが居住している場合

養育費の算定において、義務者である配偶者(今回の事例では夫と想定しています)が、権利者である妻と子が居住している場合には、住宅ローンの支払いは考慮されるのでしょうか。

原則としては、住宅ローンなど、夫婦で形成した共同債務については、原則として、財産分与で考慮すべき事項であり、養育費の算定においては、考慮されていません。

財産分与において、住宅の価値の2分の1とすること等により清算がなされることが想定されていると考えられる場合があるでしょう。

もっとも、離婚時点では、住宅がオーバーローンであるため、財産分与によって住宅が清算がなされていない事案が存在します。

このような事案において、義務者(夫)が住宅ローンの返済を継続していくこと、住宅に権利者・子どもが居住している場合には、義務者が権利者が本来すべき負債の債務も返済しているものと考えられるため、住宅ローンの金額を養育費の算定に当たって考慮することが相当であると判断される場合があるでしょう。

金額の算定方法については統一的な見解があるわけではなく、各事情によってさまざまな算定豊富が取られています。
住宅ローンの支払額を特別経費として算定の計算から控除するといった方法が取られることがあります。

養育費の算定方法としては以下の方法をとるといったことが考えられるでしょう。

① 総収入から住宅ローンの支払額を控除した額を総収入とみて算定表を利用する方法
② 総収入に基礎収入率を乗じて得られた金額から住宅ローンの支払額を控除して基礎収入を算定し、標準的な生活費指数を用いて分担額を算定する方法
③ 住宅ローンの支払額を特別経費に加算して基礎収入率を決めて、挿入からこれを乗じて基礎収入を算定し、標準的な生活指数を用いて分担額を算定する方法
などが利用されることがあるといわれています。

山口家庭裁判所平成4年12月16日審判では、財産分与調停事件で取り決めた養育費の減額審判において、義務者の可処分所得を算出するにあたって、居住している市内の平均的住宅賃料などを考慮して、住宅ローンの半額を特別経費として認める事案などが存在しますので、住宅ローンの支払額を一定程度養育費の算定から減額するいったことはありえるでしょう。

もっとも、住宅ローンの金額が高額であったとしても、養育費全額を差し引くといった考え方が取られることはあまりとられず、一定の範囲で差し引くといった場合が多いでしょう。

また、婚姻費用分担の事例ではありますが、最高裁平成18年4月26日決定においては、夫が住宅ローンを負担する住宅に妻が居住している事案において、住宅ローンは、夫の資産の維持のための出費という一面をもつことから、これを直ちに夫の所得から控除するのは相当ではないものの、他方で、これによって妻の住居費の負担が軽減されていることに着目すれば、婚姻費用を決定する際の一事情として考慮すべきものと考えられるとして原審の判断を相当とした事例があります。

婚姻費用の事案であり、養育費の場合と同じ利益状態ではないため直ちに差し引くことは相当ではありませんが、義務者が住宅ローンを負担することによって住宅に権利者が住むことで住宅費(家賃)相当額が軽減されている側面があるとして、家賃相当額を支払っているなどとして、算定表の金額から住居費(家賃)相当額の減額を考慮していくといった方法も事案によっては考えられるでしょう。

(2)住宅ローンを支払っている住宅に義務者が居住している場合

義務者が自身が居住する住宅に居住している場合には、養育費の金額が減少させる事情がないとして、考慮されないことが多いでしょう。

3 まとめ

住宅ローンが残っている場合、不動産が関係する離婚の場合には、養育費の算定などにおいてのちに揉め事が出てきてしまうことがありえます。住宅ローンの支払いがなされても養育費がきちんと支払われるのか、住宅を売却して清算をしてしまうほうがよいのか、住宅ローンの連帯債務者となっていないのかなど考慮しておくべきことがありますので、離婚調停などを弁護士に相談、依頼をしながら進めていくことをお勧めいたします。

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