成年後見の申立ては弁護士にご相談、ご依頼を
☑ 成年後見の申立てを行いたい
☑ 成年後見を申立てをすべき場合とは
1 成年後見制度とは
(1)成年後見制度の概要
成年後見制度とはどのようなものでしょうか。
成年後見制度は、認知症、知的障害、精神障害などの精神上の障害により判断能力が不十分な方を支援する制度をいいます。
支援制度としては、法定後見制度(後見・保佐・補助)と任意後見制度(任意後見契約を行い援助者を定める制度)が想定されています。
任意後見制度は、ご本人様が必要な判断能力を有している時点で、将来、判断能力が低下したときの保護の在り方を事前の任意の契約をしておいて決める制度です。任意後見では、家庭裁判所では、任意後見監督人が選任され、間接的な監督を行っていくことになります。
成年後見では、精神上の障害が不十分な場合に、家庭裁判所に申立てを行い、家庭裁判所が本人に対する援助者として成年後見人の選任していくことになります。家庭裁判所は、精神上の障害の程度に応じて、成年後見人、保佐人、補助人などを選んでいきます。
(2)成年後見制度はどのような場合に利用するのでしょうか。
① 認知症で一人暮らしの親が高額な商品を買ってしまう場合
詐欺被害に遭わないように心配となり財産管理を行ってもらうために、成年後見制度を利用するといったことが考えられます。
② 遺産分割協議を行いたいが認知症で施設に入っているために協議を進めることができない場合
遺産分割協議を行っていくためには、判断能力が不十分であるために成年後見人の申立てを行わなければ先に進めていくことができない場合に申立てが必要となってくることがあります。
③ 特別養護老人ホームへの入居費を賄うため本人のために預金の解約をしたい場合
認知症や精神上の障害により銀行での手続きをしたいと考えても、ご本人が手続きを進めることができないために、成年後見人の申立てを行い福祉サービスの契約などを行うことが考えられる場合があります。
④ 施設で寝たきりとなっているため本人のために不動産を売却しておきたい場合
不動産を売却するためには、判断能力が必要となってくるため、精神上の障害により不動産の売却手続きを行うことができない場合には、成年後見人の申立てを行い、手続きを行って財産管理を行っていくことがあります。
⑤ 家族による使い込み、経済的虐待が疑われる場合
これまで兄弟の一人が認知症となった母親の財産を管理していたものの、ギャンブルなどにより財産を使い込み、介護施設への支払いが滞っているなどの事態が判明した場合には、年金などの管理を行っていくために成年後見人を申し立てるといったことがあり得ます。
ほかにも破産手続き、交通事故に基づく損害賠償手続きなど裁判手続きを行うために、成年後見人が必要となるといった場合があるでしょう。精神上の障害により判断能力が不十分なために契約等の法律行為における意思決定が困難な場合に利用していくことになります。
法律事務所に成年後見の申立てを相談したい、依頼をしたいといった場合にも多くは、何らかの法律行為を行う必要があって、手続きを進めるために成年後見を利用しなければならないといった場合があるでしょう。
2 成年後見人の申立ての流れについて
(1)手続きの流れ
家庭裁判所は、申立てにより、精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者について、一定の者の申立てによって後見開始の審判を行うこととなります。
精神上の障害があった場合には自動的に成年後見人が選ばれるわけではなく、配偶者や4親等内の親族等による資料をそろえた申立てが必要となります。
大きな流れとしては、
① 本人および関係者からの法律相談・成年後見の申立てに向けての契約
・弁護士費用として22万円から33万円程度が必要となる場合があります。
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② 診断書の取得
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③ 必要書類の取得
□ 後見・保佐・補助 開始等申立書
□ 申立事情説明書
□ 本人の財産目録、資料
□ 本人の収支予定表、資料
□ 親族の意見書
□ 親族関係図
□ 後見人等候補者事情説明書
□ 戸籍個人事項証明書、住民票、後見人等の住民票など
□ 本人が登記されていないことの証明書
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④ 申立費用の準備、申立書類の作成
・収入印紙 800円
・予納郵便切手 各家庭裁判所で定める金額
・登記印紙 2600円
・鑑定費用 10万円程度
鑑定費用は、鑑定を引き受ける医師の意向や鑑定のために要した労力などに応じて決められますが、ほとんどは10万円以下となっているといわれています。
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⑤ 面接日の予約・面接日
家庭裁判所では、原則として、申立人および後見人等候補者から詳しい事情を聴くために面接日が設けられることとなります。
※ 成年後見人選任の場合で、後見状態であることが診断書などから明らかであること、2親等以内の親族の同意があること、成年後見人等候補者名簿に記載がある場合などには面接が省略されることがあります。
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⑥ 家庭裁判所による事実の調査・精神鑑定
家庭裁判所は、申立書、申立事実説明書などから、本人の心身の状態、監護の状況、親族・利害関係人との人間関係、財産状況、申立ての動機・目的がなされます。
また、後見開始の審判をするためには、本人の精神の状況において、医師その他適当な者に鑑定をさせなければならないとされています。ただし、明らかにその必要がないと認めるときには鑑定をしなくてもよいとされています(家事事件手続法119条)。
直近に鑑定が行われているなどの事情で実際には、精神鑑定が行われないことがあります。
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⑦ 審判
家庭裁判所は、原則として、所定の事項を記載した審判書を作成して審判が行われることとなります(家事事件手続法76条)。
成年後見人に対する告知の日から2週間以内に即時抗告がなされなければ、審判は確定します(家事事件手続法86条)。
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⑧ 登記嘱託
後見開始の審判が効力を生じたときに、家庭裁判所の書記官は、遅滞なく後見登記法に定める登記が嘱託されます。
(2)成年後見人の申立てを弁護士に依頼をする
成年後見の申立てを行うことができる人(申立権者)は、本人、配偶者、4親等内の親族、成年後見人等、任意後見人、任意後見受任者、成年後見監督人等、市区村長、検察官などになります。
しかし、多くの人にとって成年後見の申立ては初めての経験であるために、成年後見人の申立てについては数多くの書類などを整え、申立ての準備を適切に行っていくことはなかなか難しいといった場合があります。
そこで、必要資料の作成、申立手続を進めていくために弁護士に依頼を進めていくとよいでしょう。
天王寺総合法律事務所では、成年後見申立て業務を執り行っていますので、成年後見申立てを考えておられる家族がいる場合には弁護士に相談ください。
大阪弁護士会所属。立命館大学法学部卒・神戸大学法科大学院卒。数多くの浮気不倫問題、離婚問題を取り扱っている弁護士。関西地域にて地域密着型法律事務所を設立。