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成年後見人ができること、できないこととは?

成年後見人ができること、できないこととは?

成年後見制度では、認知症、知的障害、精神障害、交通事故の後遺症などの精神上の障害のために、社会生活を送る上での必要な判断能力が不十分となった人に対して、判断能力の低下に応じた支援を行う制度です。

財産関係が少ない場合やご家族に成年後見人を任せても問題がない場合には、成年後見人となることがあります。この場合には、家庭裁判所において、成年後見人の業務を監督する成年後見監督人が選任されることがあります。

では、成年後見人となった場合に、できること、できないことはどのようなことがあるのでしょうか。

このページでは、成年後見人ができること、できないことについて解説させていただきます。

1 成年後見人ができること

成年後見人の役割としては、大きく分けて
① 財産管理を行うこと
② 身上管理を行うこと
があります。

成年後見人ができることは、【法律行為】であり、事実行為ではないことを意識しておくとよいでしょう。

(1)財産管理を行うこと

成年後見人は、本人の財産に関して包括的管理権を有し、財産に関する法律行為について包括的代理権を有することとなります(民法859条1項)。

具体的な内容としては、

① 預貯金・現金 : 本人の財産を保管するにあたっては、本人の財産とご自身の財産との混同が発生しないよう財産を明確に区分をしていくことになります。成年後見人等が就任した届出を金融機関に行った場合には、預金口座の名義【○○○○成年後見人××××】と変更となることはあります。残高が少額な口座を存続するのか、不要なキャッシュカードの廃止などを行うことがあります。
本人の生活状況に応じて、電気、ガス、水道その他のライフラインについて、必要な支払を継続していかなければなりません。

② 年金 : 年金を受給している場合には、年金を適切に管理をすることとなります。成年後見人は、本人の保護の制度であるため、ご家族が年金などを使い込むことはできません。

③ 役所等への届出: 成年後見人として就任した場合には、健康保険、介護保険、障害基礎年金、障害特別手当、固定資産税などの種々の手続関係を市役所にて届出をすることとなります。必要な添付資料と後見人の登記事項証明書を出すこととなりますので、市役所に確認をしていくこととなるでしょう。

④ 不動産の管理 : 成年後見人には、本人の財産を適切に管理する必要があるため、むやみに処分をすることは差し控えなければなりません。本人の生活のために、不動産をどのように管理をしていくのかを考えていくこととなります。固定資産税の支払いや家屋が老朽化して倒壊のおそれがある場合には、資産を踏まえて修理を行うのか、取り壊すのかなどを管理していくこととなるでしょう。
老人ホームなどに本人の今後の生活を踏まえて、不動産を処分して現金化する場合などでは、重要な財産の処分であるとして、家庭裁判所への相談、後見監督人の同意をするなどの対応を行っていくことが大切となるでしょう。居住用不動産の売却、アパートの賃貸借契約の解約などを行う場合には、家庭裁判所の許可が必要となります。

⑤ 身上監護を行うための契約 : 居住介護サービス契約、施設入所契約、診療契約など、本人の今後の身上監護のため、適切な契約締結を行うこととなります。

⑦ 遺産分割手続・相続手続き : 本人が相続人となった場合には、成年後見人として協議分割協議を行い、遺産分割協議が成立しない場合には、家庭裁判所に遺産分割協議の調停を行います。もし、後見人自身も相続人となっている場合には、利益相反となるため、後見監督人が代わりに手続きをすることとなります。
 相続財産を調査し、借金が財産を上回っていることが判明した場合には、相続放棄申述を家庭裁判所に行うことを検討することが必要となります。

(2)身上管理を行うこと

成年後見人は、本人の生活、療養監護及び財産の管理に関する事務を行うに当たっては、本人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態及び生活の状況に配慮することが規定されています(民法858条)。そのため、成年後見人には、身上監護に配慮すべきおと、本人意思の尊重を行っていくこととなります。
 もっとも、ここでの事務とは【法律行為】と意味するものであるため、現実の量要介護や看護行為など事実行為は身上管理としては含まれていないこととなります。
財産管理と被る部分も存在していますが、具体的な内容としては下記のようなものがあります。

① 本人のための要介護申請、介護契約、契約の解除、費用の支払い : 介護保険制度による介護サービスを利用するためには、要介護、要支援認定の申請を行い、認定を受けることが必要となります。

② 本人の身上監護のための介護付老人ホームなど契約、賃貸借契約、解除、費用の支払い : 介護付き、住宅型、健康型など有料老人ホームなどについて入居の申込みなどを行うこととなります。
なお、後見人等は、本人の財産管理を行う者であるため利益相反の関係から身元保証人にはなることはできませんと考えられています。

③ 医療契約やリハビリの契約の締結、契約の解除、費用の支払い : 医療契約を行うこと、公的利用保険が変更される場合には変更の手続きなどを行います。
 なお、手術などを受ける医療行為の同意権については、本人だけが決定することができる性質のものと解されているため、成年後見人には医療同意の権限がないと解されています

④ 本人の利益のためとなる身上監護に関する法律行為

2 成年後見人ができないこと

成年後見人は、あくまでご本人のための制度であるため、ご本人の利益を害する形でご家族の利益を図るような行為をすることはできません。

① 日常生活の購入などの同意・取り消しについて

成年後見開始の審判を受けていた場合でも、本人意思の尊重などの見地から、日用品の購入、日常生活に関する行為については、本人は自ら単独にて法律行為を行うことができ、成年後見人もその行為を取り消すことはできないこととなっています。

日常生活用の費用を現金で出しておき、身近な方に出納長を作成しておくなどの工夫によって財産の浪費がないようには注意することとなるでしょう。

② 事実行為について

誤解されやすいこではなりますが、成年後見人は【法律行為】の代理などを行うこととなり、介護等の事実行為を行うことはできません。普段の食事、施設から病院までの送迎、生活用品の買い出し、掃除、洗濯、草むしり、食事を作るなどは、後見人が直接労務提供を行うことはできず、適切なホームヘルパー契約などによってサービスを受けらえるよう契約などを進めていくことになります。

③ 医療行為への同意について

医療契約の締結などは成年後見人は行うことができますが、どのような医療行為を行うのかの判断は本人のみができる固有の権利であるため、成年後見人は医療行為への同意を行うことができません。ご本人の親族の立場として同意を行うことができる場合はありますが、成年後見人が手術の同意書に署名などはできないこととなります。

④ 身元保証人・身元引受人などについて

医療機関や社会福祉施設などは成年後見人に本人の身元保証人などとなることを求めることがありますが、成年後見人は利益相反の観点などから本人の債務を連帯することはできません。

3 まとめ

成年後見人は、判断能力などが低下してしまった方に向けての支援を行う制度ではありますが、法律によって家庭裁判所により選任されているため、権限には一定の範囲があります。ご家族が成年後見人となる場合には、家庭裁判所での説明書やしてはならないことなどに特に注意をしていくとよいでしょう。

成年後見人は、あくまでご本人のために、仕事をすることが求められていますので適切な対応を行っていくとよいでしょう。

天王寺総合法律事務所では、成年後見申立手続などを行っておりますので、ご相談、ご依頼がある方はお気軽にお問合せください。

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