有責配偶者からの離婚は認められないのでしょうか。
浮気をした配偶者から離婚を求めて来るなんて許せないと思われる方もおられるでしょう。
裁判所も同じ思いを持っており,有責の配偶者からの離婚を請求する場合には,一定の事情がない状態でなければ認められないと判断がなされています。
では,浮気をした配偶者からは将来にわたっての離婚が認められないのかといえばそうではありません。
結婚の期間や同居の期間などにもよりますが,別居をして10年といった場合には,有責配偶者からの離婚請求が認められる場合があり得ます。
したがって,離婚までにどのように生活を再建していくのかといったことを別居期間中に考えておかれることとよいでしょう。
1 有責配偶者からの離婚請求が認められる条件ができるまでの流れ
昭和27年という古い時代の判決ではありますが,浮気をした子どもを設けた夫が妻に対して離婚を求めた案件において最高裁は,勝手に浮気をしておき,妻と同棲ができないから,これを追い出すといったことは踏んだり蹴ったりという状態を招くため,法律はこのような不徳義勝手気儘をゆするものではないといった判断をして,有責配偶者からの離婚請求に対しては,婚姻関係を継続し難い重大な事情には当たらないとして,離婚請求を認めないといった判断を出したことがあります。
浮気をした側からは有責配偶者として離婚請求は認められないこととなりました。
一方で,有責配偶者からの離婚請求であっても,その夫婦の年齢や同居期間と比べて相当の長期間別居をしていることや夫婦の間に未成熟の子どもがいない場合など,相手方配偶者が離婚をすることによって,精神的・社会的・経済的に極めて苛烈な状況におかれる等の離婚請求を許容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情がない限り,有責配偶者からの一時をもって離婚請求が許されないとすることはできないといった判断が昭和62年の最高裁によってなされています。
36年間別居している事情や未成熟の子どもがいない事情などを踏まえて,有責配偶者からの離婚請求が認められることとなりました。
そのため,現在は,有責配偶者からの離婚請求が認められるかどうかについては,
① 夫婦の別居が年齢や同居期間と対比して相当長期間に及んでいること
② 夫婦の間に未成熟の子が存在しないこと
③ 相手方が離婚により精神的・社会的・経済的に苛烈な状態におかれるなどの離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情が認められないこと
といったことが要素として考えられることとなります。
2 別居の期間が相当長期間に及んでいることについて
別居期間が10年を超える事案については,同居期間などを比べるところまでいかずとも相当長期間とされる傾向があるように思われます。
一方で,同居期間が短いといった事情の場合には,別居期間が短い場合であっても相当長期間の別居が認められる可能性があるでしょう。
3 未成熟の子への影響
別居期間はあるものの,高校3年生や中学2年生の子どもがいる事案においては,未成熟の子の影響があることなどから,認められないといった事例があることから,高校卒業などを一つの視点としておいてもよいように思われます。
4 精神的・社会的・経済的に極めて過酷といえるか。
離婚に伴う経済的給付が生活を維持していくうえで十分になされているかどうかを検討することとなるでしょう。配偶者の経済的状況が判断の分かれ目となる場合があり得ます。
5 まとめ
有責配偶者からの離婚請求があった場合には,これを排斥して,離婚をせず,婚姻費用を貰うといった選択肢を取れる方もおられます。
これは戦略としてはできる限り経済的に支えてもらう体制を整えるためには必要なものです。
しかし,将来は別居期間が長期間に及んだとして離婚請求が認められる可能性が高まっていきます。財産分与についても別居後には資料が散逸してしまい十分に対応できないことがありえるかもしれません。
離婚においては,様々な事項が多岐にわたって問題となりますので,弁護士に相談をして,離婚手続きをどのように進めていくべきかの作戦を立てられるとよいでしょう。
大阪弁護士会所属。立命館大学法学部卒・神戸大学法科大学院卒。数多くの浮気不倫問題、離婚問題を取り扱っている弁護士。関西地域にて地域密着型法律事務所を設立。