【大阪天王寺の弁護士が解説】養育費の一括支払いは認められるのでしょうか。

離婚後にも、父母は子どもの親御さんであることは変わらいないため、子どもに対しては扶養義務を負うこととなります。
民法877条1項には、直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務があるとして、扶養義務があることを定めています。
そこで、親権者となった親は、監護をしていない親に対して、子の監護に関する処分として、養育費を請求することができます。
民法766条には、子どもの監護に関する処分について、協議を行い、協議を行わないときには、家庭裁判所において調停、審判を定めることとなっています。
では、将来の養育費について一括支払を求めることができるのでしょうか。
養育費は、本来的には定期的な給付を行うものです。
もっとも、支払の方法については当事者の協議によってきます。
そのため、当事者の合意によって一括前払いの合意をすることができれば、養育費の一括支払いが認められることがあるでしょう。
(想定事例)
夫は、浮気相手と旅行に行く、ブランド品を買うなど浪費をしていました。そのため、今後養育費を支払ってもらえるのか不安です。子どもの将来のことおありますので、一括での前払いで養育費の支払いを求めることはできるのでしょうか。
1 養育費の算定について
養育費については、簡易迅速な養育費等の算定を目指してー養育費・婚姻費用の算定方式といった研究に基づいて、算定表を使って、金額を計算していくこととなります。
令和元年12月には、新しい算定表が発表されました。
各当事者の
① 権利者、義務者の総収入を認定し
② 公租公課の金額、職業被、特別経費から基礎収入を算定します。
③ 権利者・義務者・子の生活費の認定を行い
④ それぞれの生活費を基礎収入から按分して、義務者の金額を認定していくこととなります。
それぞれの総収入の証拠を確認して、家庭裁判所で金額を定めていくこととなります。
具体的な金額について、
・源泉徴収票
・課税証明書
・確定申告書
などを参照し、家庭裁判所に算定表を利用して、おおよその目安を立てておくとよいでしょう。
【平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について】
https://www.courts.go.jp/toukei_siryou/siryo/H30shihou_houkoku/index.html
2 養育費の支払方法について

支払方法については、一般的には定期金の支払、月額払いの支払が求められています(東京高裁決定昭和31年6月26日)。
また、子どもの養育費は月々発生していくものでありますので、月額払いで調停条項を定めることが多いでしょう。
東京家庭裁判所審判平成18年6月29日において、養育費は、その定期金として本質上、毎月ごとに具体的な養育費支払請求権が発生するものであるとして、養育費の提起債務性が重視されている判断がなされています。
したがって、調停において当事者で一括支払いの合意をしなかった場合に、審判手続きにおいて、一括前払請求が認められることは難しいとの結論となるでしょう。
3 養育費の協議、調停手続き

養育費の一括支払いが認められるためには、当事者での話し合いにて合意をすることが大切となってきます。
養育費の協議の中で、なぜ一括支払いを求めるのか、一括支払いをできるだけの収入、資力があるかどうか、一括支払いの合意をするメリット、デメリットを考えていくこととなるでしょう。
現実には、離婚の協議、調停に中で合意書を定めていくこととなるでしょう。
離婚においては、
① 離婚に合意をするのか
② 親権を誰とするのか
③ 養育費をどのようにするのか
④ 財産分与についてどうするのか
⑤ 面会交流をどうするのか
⑥ 慰謝料をどうするのか
⑦ 年金分割をどうするのか
⑧ 今後の生活設計、履行の確保をどうするのか
を定めていかなければなりません。
養育費を定める場合には、離婚調停と共に附帯として、養育費について調停を行っていくこととなりますので、他の条件と合わせて交渉内容をまとめていくこととなるでしょう。
まとめた内容について、
・公正証書においてまとめる
・調停条項でまとめる
といったことが考えられます。
仮に、離婚時点で養育費をまとめていない場合には、養育費の請求の申立てを行うことを検討しておきましょう。
【申立人】 父又は母
【申立先】
(調停)相手方の住所地の家庭裁判所 又は 当事者が合意で定める家庭裁判所
(審判)子の住所地の家庭裁判所
【申立ての書類】
申立書とその写し
申立て添付書類として、
① 対象となる子の戸籍謄本
② 収入の資料(源泉徴収票、課税証明書、確定申告書)
を記載し、収入印紙1200円などを添付して提出することとなります。
調停手続きでは家庭裁判所の調停委員が入り、双方別室ないし入れ替わりでの話し合いを行っていくこととなります。
4 まとめ
収入に関する資料については、申立て時に用意して書類により算定ができますが、
自営業者である場合や収入などを故意に低額にしている場合も存在します。
また、将来の強制執行に備えて準備をしておく、一括支払いを求めるための交渉を準備しておくなどのため、離婚事件と合わせて、弁護士に相談をして進めていくとよいでしょう。
天王寺総合法律事務所には、離婚問題、養育費問題に取り組む弁護士が所属しておりますので、ぜひお気軽にお問合せください。


大阪弁護士会所属。立命館大学法学部卒・神戸大学法科大学院卒。数多くの浮気不倫問題、離婚問題を取り扱っている弁護士。関西地域にて地域密着型法律事務所を設立。