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別居時に預貯金を持ち出した場合の婚姻費用をもらうことができるか。

別居時に預貯金を持ち出した場合の婚姻費用をもらうことができるか。

Q 別居の際に預貯金を持ち出しました。夫から預貯金を持ち出した以上は、婚姻費用を支払わないといわれたのですが、婚姻費用をもらうことはできないのでしょうか。

弁護士の回答

別居時に預貯金の持ち出しがあったとしても、婚姻費用の支払いを受けることができる可能性が高いでしょう。持ち出した預貯金の金額については、後の財産分与や未払い婚姻費用の清算などで考慮されることはあるでしょう。

1 婚姻費用とは何か。

 夫婦には、婚姻共同生活から生じる費用を、夫婦のそれぞれの資産、収入その他の事情の一切の事情を考慮して決定がなされます(民法760条)。別居を行ったとしても、夫婦である以上は、婚姻費用の分担を求めていくことができます。

 婚姻費用については、簡易迅速な養育費等の算定を行えるよう、令和元年に平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告が出され、算定表により行うことができます。

 具体的には、それぞれの収入を認定し、算定表によって金額の算定を行うことができます。
 したがって、それぞれの源泉徴収票、課税証明書などを別居前に押さえておくことが大切となるでしょう。

2 別居時に預貯金を持ち出した場合にはどのように取り扱われるのでしょうか。

別居時に共有財産を持ち出すといった事例はよく見られる自体ではあります。そして、相手方からすれば、共有財産を持ち出され、生活費として利用されているとして、婚姻費用の支払いとして考慮すべきであるとの主張にも一定の合理性があるように思われます。

しかし、婚姻費用の発生根拠は、上記に触れたとおり、夫婦共同生活から生じる費用を負担するといった側面であり、夫婦共有財産の清算といった側面とは場面を異にします。別居時の預貯金の持ち出しについては、別居時を基準としてそれぞれどの程度の財産があったのかにおいて検討し、財産分与の問題として処理を行えば足りると考えられます。

別居時に持ち出した預貯金の金額については、財産分与として夫婦共有財産を清算する際に、他の不動産、預貯金、保険などと同様に処理を行っていくことができるでしょう。

したがって、別居時に財産の持ち出しがあったとしても、婚姻費用については請求することは可能であるといえるでしょう。別居時に持ち出された財産については、審判の際の一切の事情として考慮される可能性はあるものの、財産分与で考慮されるべき問題であって、婚姻費用の算定では影響を与えないといった取り扱いが多くの家庭裁判所でなされています。

3 個別的な事実関係では、婚姻費用分担義務がないと判断される事例もある。

 もっとも、一定の事案においては、婚姻費用に充てられたと判断されている事案が存在します。①権利者が共有財産である預貯金を持ち出していたこと、②これを払い戻して生活費にあてることができる状態であったこと、③義務が預貯金を持ち出して生活費の払い戻しにあてることを容認しているとの事案においては、離婚又は別居状態の解消までの間、夫婦共有財産が婚姻費用の支払に充てられた場合には、その充てられた額を考慮して、清算をすれば足りるとして、当分の間は、持ち出した預金を義務者が負担すべき婚姻費用分担額に充て得るものであるとして、現時点での婚姻費用分担を認めないとした事案も存在します(札幌高決平成16年5月31日)。

 これらについては、夫婦間において、持ち出された預貯金を実質的にみて婚姻費用の支払方法として合意が成立しているのであれば、婚姻費用の支払として考慮をすることができると一切の事情ということができるでしょう。

 別居の際に持ち出された預貯金が夫婦間においていかなる趣旨をもっていたお金であるかといったことも婚姻費用を別途請求できるのかどうかのポイントとなるでしょう。

4 別居、離婚については弁護士に相談をしておきましょう。

 別居、離婚については、夫についてもう耐えられないといった精神的な側面がある事柄であり、十分に準備をしてから別居、離婚に至るといったことが難しいことはあるかもしれません。しかし、別居、離婚について紛争となった際にはどちらがどれだけの証拠をきちんと持っているかどうかが大きな要素となってきます。別居、離婚において、このような行動をとってもよいのか、このような行動をとるべきではないのか、今後の生活設計に向けてどのように準備をしておくべきかといったことはよく弁護士と相談をしておくことをオススメ致します。

 天王寺総合法律事務所では、大阪市、堺市、松原市、羽曳野市、柏原市、藤井寺市など近隣の離婚案件の取り扱いを行っておりますので、離婚について弁護士のサポートが必要な方はぜひお気軽にご相談、ご依頼ください。

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