
家の名前を残すなど、子どもを育てるなど様々な理由で養子縁組がなされることがあります。では、養子縁組を行った場合には、養親と養子との間には、親子関係が生じるわけですが、実の親との関係はどうなるのでしょうか。この記事では、養子縁組をしていた場合に実父親の遺産を相続できるのかについて解説させていただきます。
1 養子縁組とは何か。
そもそも養子縁組とは何でしょうか。
民法では、養子は、縁組の日から、嫡出子の身分を取得する(民法809条)と規定がなされています。
養子縁組においては、縁組届を市区町村役場に提出することで、養子縁組が成立し、法律上の親子関係が生じることとなります。
法律上の親子関係が生じることで、養親と養子とは、親子となり、養子に対する監護、教育の権利義務、扶養義務、相続権などを取得することとなります。また、養子は、養親の氏を称することとなります(民法810条)。
これらの制度は、本来の趣旨としては、子どもを保護するための制度として設けられてきました。もっとも、日本においては、後継ぎや扶養されることを目的とする成年養子が多いといわれています。
〇 養子縁組の要件
養子ができるかどうかについてはいくつかの検討すべき要件があります。
① 20歳以上であることが養子をするための要件となります。既婚、未婚は問われず、婚姻により成年に達したとみなされる者(民法753条)は養親となることができると解されています。
② 自己の尊属または年長者を要しにすることはできないこととなります(民法793条)。たとえば、おい・めいは、おじ・おばが自身よりも年少であっても、尊属にあたるため、要旨にはできないこととなります。
③ 後見人と被後見人とが養子縁組をするためには、家庭裁判所の許可を得ることが必要となります(民法794条)。
④ 配偶者のある者が養子縁組をするためには、その配偶者の同意を得なければならないこととなっています(民法796条)。
⑤ 養子が15歳未満の場合には、法定代理人の承諾をすることとなります(民法797条)。
2 養子縁組を行った場合の親子関係とは
では、養親と養子に親子関係が生じるとすると、元の親子関係はどのようになるのでしょうか。
この点、通常の養子縁組が行われた場合には、実親との親子関係も存在するものとされています。
養子縁組がなされた場合には、養親と実親との二重の親子関係が成立することとなります。
したがって、養子縁組をしていた場合に実父親の遺産を相続することができます。
例えば、XとYとの間の実子であるZが、Aと養子縁組を行い、養親A、養子Zとなったあとでも、Xが死亡した場合には、YとZが相続人となることとなります。養親Aが死亡した場合には、養子Zは相続人となることとなります。
もっとも、Zが未成年であった場合には、親権についてはどのようになるのかと民法818条2項には、子が養子であるときは、養親の親権に服すると規定がなされており、実親ではなく、養親が親権者となることとなります。
3 特別養子縁組が行われた場合の親子関係とは

しかし、養子縁組によって実親との親子関係が消滅する養子縁組が存在します。
それが特別養子縁組という制度です。
特別養子縁組とは、縁組の日から実親との親子関係を終了させ、養親との間に実親子と同様の親子関係を生じさせる制度をいいます。
養親と実親子との親子関係を生じさせるために、一定の要件が設けられ、子どもの利益に適合するかどうかを慎重に判断をするために、養親となる者が家庭裁判所に請求し、審判がなければ特別養子縁組はできないこととなっています。
民法817条の9によれば、特別養子縁組が行われた場合には、実父母およびその血族との親子関係は、特別縁組成立の日から終了するとされており、親権、扶養、相続権などはすべてが消滅すると考えられています。
したがって、特別養子縁組の場合には実親との相続をすることはできないこととなります。
〇 特別養子縁組の要件
① 養親となる者は、配偶者である者でなければなりません(民法817条の3)。
これは、特別養子縁組が実子と同様に監護養育することができることを目的とするものとなります。
② 養親となる者の年齢としては、25歳以上でなければならないとされています(民法817条の4)。もっとも、夫婦の一方が25歳に達している場合には、配偶者は20歳に達していればよいとされています。
③ 養子となる者には、6歳未満の者に限られています。もっとも、里子のように養親となる者から監護されていた場合には、8歳に達するまでは、特別養子縁組をすることができます(民法817条の5)。
④ 特別養子縁組は、法律上の実親子関係を終了させるために、実父母の同意が要件となります(民法817条の6)。
もっとも、父母がその意思表示をすることができない場合や父母によるが虐待、悪意の遺棄があるなどその他養子となる者の利益を著しく害す場合には、同意は不要となります。
⑤ 当別養子縁組は、父母による養子となる者の監護が著しく困難または不適当であることその他特別の事情がある場合には、子の利益のために特に必要があるときに養子縁組が認められることとなります(民法817条の7)。
4 まとめ
養子縁組を行った場合には、相続関係が複雑化する可能性があるため、相続にあたっての紛争をさけるため、相続に向けての準備をされることをおススメいたします。


大阪弁護士会所属。立命館大学法学部卒・神戸大学法科大学院卒。数多くの浮気不倫問題、離婚問題を取り扱っている弁護士。関西地域にて地域密着型法律事務所を設立。