【大阪天王寺の弁護士が解説】児童自立支援施設とはどんなところなのでしょうか?
少年事件として家庭裁判所で審判がなされる場合には、審判期日で言い渡される決定にはいくつか種類があります。
1 家庭裁判所の決定の種類とは
大きく分けて
(1) 保護処分
① 保護観察
② 児童自立支援施設 または 児童養護施設送致
③ 少年院送致
(2) 不処分
① 保護処分に付することができないとき
② 保護処分に付する必要がないとき
(3) 児童福祉手続 児童相談所送致
(4) 検察官送致
(5) 中間決定→試験観察
といったものがあります。
家庭裁判所では、非行を行った少年に対して保護をする必要性がある場合には、保護処分を行い、保護をする必要がない案件の場合には、不処分となってくることとなります。
家庭裁判所での保護などに適しない刑事裁判を行うことが相当の場合には、検察官送致などがなされることとなるでしょう。
保護観察とは、少年を施設に収容せず、一定の事項を遵守するように保護観察所が私道や監督し、社会内による処遇や改善更生を行っていくものとなっています。
保護観察では、観護措置が取られている場合にも、少年は解放され、保護観察期間の間に保護観察官や保護司などから定期的に観察を受けることとなります。
少年院送致とは、家庭裁判所において、少年院に収容し、社会生活に適用させるため、その自覚に訴え、規律ある生活のもとに教科、職業の補導、適当な訓練などを行い、矯正教育を行うこととなっています。少年院には、初等少年院(12~16歳未満の子どもが対象)、中等少年院(16歳以上20歳未満が対象)、特別少年院(犯罪傾向が進んだ16歳以上の子どもが対象)、医療少年院(心身に著しい呼称がある12歳以上の子どもが対象)となり、特修短期4か月以内、収容期間が6か月以内の一般短期処遇、比較的短期8か月程度、2年以内の長期処遇などにより各区分、各期間が定められます。
家庭裁判所は、非行がないとして保護処分に付することができない場合や裁判官によって指示や訓戒によって、改善が期待できる場合には、不処分となることがあり得ます。
多くの事案においては、保護観察となるか、少年院送致といった保護処分にて判断がなされることがあるでしょう。
2 児童自立支援施設送致とは
児童自立支援施設とは、不良行為をした児童または将来不良行為をなすおそれのある児童、家庭環境、その他の環境上の理由により生活指導等を要する児童を入所させ、あるいはそのような児童を保護者のもとから通わせることによって、必要な指導を行ったり、退所した児童について相談その他の援助を行ったりすることを目的とする施設をいいます。
児童自立支援施設の入所対象者としては、
児童福祉法44条により、
① 不良行為をした児童
② 将来不良行為をなすおそれのある児童
③ 家庭環境その他の環境上の理由により生活指導等を要する児童
をいいます。児童とは、満18歳に満たない者をいいます。
少年法の保護処分によって児童自立支援施設に入所した児童の割合は17%といわれています。入所期間の所在はおおむね1年半から2年程度といわれています。
児童自立支援施設は、全国58か所あり、国立の武蔵野学院(男子)、きぬ川学院(女子)など、各施設によって様々な指導が行われています。児童自立支援施設では、生活指導(寮での日常生活を通じた個別指導等)や学科指導を受けることとなります。
各施設によって、個性があり、学校指導要綱などを参照として、教育も行われています。中学校を卒業した児童については、高校への進学、高校進学のための学習、就職準備のために指導などが行われます。
児童自立支援施設は、原則として施設が施錠されていない解放処遇がなされています。
家庭裁判所への送致が行われ、強制的な措置が行われることが存在します。強制的措置を取ることができるのは、国立の施設が対象とされます。
3 児童自立支援施設と少年院との違いについて
児童自立支援施設は上記のとおり、開放処遇が原則とされていることに対して、少年院は強制的に収用するための強制的な施設となっています。
また、所管官庁についても、児童自立支援施設は、厚生労働省の管轄として、福祉施設であるのに対して、少年院は、法務省の管轄として強制施設として存在します。
家庭裁判所での審判において、少年院となるのか、児童自立支援施設となるのかについては、年齢、少年の家庭環境、非行の原因、背景、非行の内容、非行の程度などを踏まえて、判断がなされます。
もっとも、児童自立支援施設では、中学3年生の2学期以降からの受け入れについて、消極的な施設が多いため、児童自立支援施設送致の可能性が低くなるとされています。
家庭環境において親権者が養育を放棄している場合には、少年を虐待しているなどの場合には、児童自立支援施設の場合にも、児童自立支援施設が選択されることとなります。
犯罪の内容について、薬物依存や性犯罪などでは、児童自立支援施設では対応が困難なため、少年院が選択されることとなるでしょう。
4 まとめ
少年事件では、保護処分、刑事処分などとの異なり、福祉措置を行うために児童自立支援施設が選択される場合が存在します。少年事件においては、少年のご両親などから監護、監督できる環境を整備することで社会内での保護を受けることができる場合があり得ます。少年事件についてご相談をされたい方はぜひお気軽にご相談ください。
大阪弁護士会所属。立命館大学法学部卒・神戸大学法科大学院卒。数多くの浮気不倫問題、離婚問題を取り扱っている弁護士。関西地域にて地域密着型法律事務所を設立。