内縁と事実婚の違いは何でしょうか。内縁関係の解消をするためには?
内縁と事実婚については、法的な違いがあるわけではありません。内縁・事実婚となった場合には、婚姻関係と類似の関係となり、不当破棄がなされた場合には慰謝料請求は解消の際に財産分与請求権が認められることがありえます。当事者での協議が整わない場合には、調停などを家庭裁判所によって解決をしていくことが考えられるでしょう。
1 内縁と事実婚の違いは何でしょうか。
内縁と事実婚とは違いはどのようなものなのでしょうか。
内縁とは、婚姻の社会的実体はあるが婚姻届の出されていない男女関係をいいます。
事実婚も婚姻の届出をしていない点で同様の意味であると考えられています。
夫婦別姓の実践や戸籍を通じて家族関係の把握・管理されることへの疑問から主体的に婚姻届を出さなかったものと事実婚、そうでない場合を内縁という分類をする方も存在します。
2 内縁と事実婚の成立要件について
内縁と事実婚については、用語としてほぼ同様の状態を意味合いします。
では、内縁の成立要件とはどのようなものとなるのでしょうか。
内縁が成立するためには、
① 婚姻の意思が存在していること
② 夫婦共同生活が存在していること
が必要であるとされています。
婚姻の意思が存在していることには、婚姻の意思があることを認定してもらえることがあります。
・婚姻の意思をもって夫婦生活を営んでいるのか
・親族から夫婦だと認識されているか
・結婚式など、社会的に二人で夫婦として認められるか
・家計が同一となっているか
・子どもが存在するか、子どもの認知がなされたか
・住民票、社会保険において3号被保険者となっている
・契約書の名称、公正証書などにおいて事実婚に関する契約書を締結していること
・同居期間が長期間に及んでいること
(法律において何年同居をすれば、内縁関係が成立するといった法的判断基準が存在するわけではありません。しかし、同居期間が長期間に及ぶことがあれば、実質的に夫婦共同生活があるといった認定がなされることとなるでしょう)。
などを総合的に勘案して、婚姻の意思があったかどうかによることとなります。
また、夫婦共同生活が存在していることが必要とされるため、婚姻外の男女の環形が継続していた期間中、両者の住所が異なっており、共同生活をしたことが全くなく、それぞれが自己の整形を維持管理していたこと、共有する財産がなかったこと、子どもが生まれていたものの養育には一切かかわらないことなどについては、共同生活が存在していないとして、内縁関係にはあたらないと判断されることがあります(最高裁平成16年11月18日判決)。
〇 重婚的内縁関係とは
内縁には、夫婦の一方又は双方に法律上の配偶者が存在する場合には、重婚的内縁関係をいい、法律婚が客観的に破綻している場合には、内縁関係を認めることがあります。
最高裁平成17年4月21日判決では、私立学校教職員共済法に基づく退職共済年金の受給権者が男性が死亡した事案において、
①法律婚が存在する妻とは20年以上にわたって別居をつづけ、継続的な交流を行っておらず、婚姻関係修復の努力もなされていないなど婚姻関係の実体を喪失して修復の余地がないまでに形骸化しており、
②一方で、別居後に親密な関係となった女性とは、同居し夫婦同然の生活を送っていたこと、家計を同一して生計を維持していたこと、死亡する最後まで看護をするなど事実上婚姻関係とある者であるといった事実関係があり、
③内縁の女性に対して、遺族共済年金の支給を受けるべきと判断がなされました。
3 内縁の効果はどのようなものか。
内縁関係については、法律婚と準じて効力が生じることとなります。
そのため内縁の効果として
① 同居協力扶助義務
② 貞操義務
③ 婚姻費用分担
④ 日常家事債務の連帯債務
⑤ 夫婦財産の共有の推定
⑥ 離婚の際に財産分与
が生じることとなります。
なお、法律婚が提出された場合に認められる効果については認められないこととなります。
・氏の変更はなされません
・成人擬制は適用されません
・内縁当事者間の契約の取消権
・内縁配偶者と親族との間では婚族関係は生じない
・子どもは非嫡出子となります
・内縁相手に対して相続権を有することはありません
内縁関係が死亡によって解消された場合に、財産分与に関する民法768条の規定を類推適用することはできないとして、財産分与請求権などによって相続のように財産を清算することもできません(最高裁平成12年3月10日決定)。
4 内縁関係の解消を行う方法とは
内縁関係を正当な理由なく、解消をした場合には、慰謝料が行われる可能性があります。
そのため、内縁関係の解消を行っていくにあたっては、適切な手続きを行うことが大切となるでしょう。
また、内縁期間が長期間となった場合には、財産分与に関する民法768条1項の類推適用によって、財産関係を清算していくといったことが考えられます。
そこで、家庭裁判所において、内縁解消調停調停(解消)を申し立てることによって解消についての協議を行うことができます。
● 申立人
内縁の夫 又は 内縁の妻
● 申立先の管轄裁判所
相手方の住所地の家庭裁判所
又は
当事者が合意で定める家庭裁判所
● 申立てに必要な資料
① 申立書及び申立書の写し
② 添付書類
申立人及び相手方の戸籍謄本
内縁関係を示す資料(住民票の写し、事実婚を示す契約書など)
・申立ての趣旨として、申立人と相手方間の内縁関係を解消する。
・養育費
・財産分与
・慰謝料
などの記載を行います。
申立ての理由として
・同居・別居の時期
・申立ての動機
を記載することとなります。
財産分与については、内縁を解消したときから2年以内に申立てをしなければならないこととなります(民法768条2項類推適用)
●申立て費用として
収入印紙 1200円
家庭裁判所が定める予納郵券
を収めることとなります。
5 まとめ
内縁関係について解決していく場合にも財産分与や協議をしなければならない事項が多くあります。そのため、内縁関係の解消、協議などについて弁護士に相談していくことをオススメ致します。
大阪弁護士会所属。立命館大学法学部卒・神戸大学法科大学院卒。数多くの浮気不倫問題、離婚問題を取り扱っている弁護士。関西地域にて地域密着型法律事務所を設立。