【天王寺の弁護士が解説】性行為がないと不倫慰謝料は請求できない?
不貞行為に基づく損害賠償では、性的関係、性行為を持っているかどうかがポイントとされています。
では、性行為がない場合には、不倫をしていても慰謝料は請求できないのでしょうか。
このページでは、不倫において性的関係までには至っていない場合にはどのようになるのかを解説させていただきます。
1 性行為や肉体関係をもっていない場合には,不倫慰謝料は請求できないのでしょうか。
不貞行為とは、配偶者以外の者と性的関係を結ぶことを言います。
夫婦は、婚姻した場合には、貞操義務を負い、相互に貞操を守らなければなりません。
配偶者以外の者との性的行為を行うことは、夫婦の貞操義務に違反し、夫婦関係を類型的にみて破壊させるものであるとして、離婚原因(民法770条1項1号)にも明記されています。
では、性的関係、肉体関係がない場合には、不貞行為に当たらないとして慰謝料請求は認められないのでしょうか。
(1) 夫婦共同生活の維持を侵害するものとして慰謝料が認められる場合があり得る。
この点、確かに,配偶者がいる方といって異性と全く外で食事をすることができないなどまったく交流が認められないとは言い難い部分があり,異性との関わりすべてを違法とすることはできないでしょう。
しかし,例えば,路上で抱き合う,キスをする,服の上から体を触るなどのスキンシップ行為については写真がある一方で,ホテルに行く等肉体関係がなかった事案を想定してみましょう。
この場合には,肉体関係を持っているという意味での不貞行為には該当はしないといえます。
しかし,配偶者のいる方に対して関わりかたとしては不適切であると思われることでしょう。
そもそも,浮気・不倫の慰謝料が認められている理由には,婚姻共同生活の維持という権利や利益が存在することがあります。
そのため,必ずしも肉体関係を持たずとも,婚姻共同生活の維持や利益といったものを侵害することは可能であると考えられます。
性的関係や肉体関係をもたない行為であっても,路上で抱き合う行為やキスをするといった行為,服の上から体を触るといったスキンシップを行っている場合には,そのような行為が継続されてきた期間を踏まえていくと,夫婦共同生活の維持という権利や利益を侵害しているといえる場合があり得るでしょう。
そのため,配偶者がいる異性との交際として社会で認められている限度を超えているという判断がなされ,違法とされることが在り得ます。
したがって,不貞行為とは直ちにいえない行動であっても,関わり方やその期間によっては,違法行為になるとして損害賠償請求を行うことができます。
(2)キスや抱き合うといった行為のすべてが慰謝料請求の対象とならないことに注意が必要。
キスや抱き合うといった行為については,文化や国によって評価に差異が生じる事柄です。キスや抱き合うといった行為があったとしても,それらの人々の生活歴や文化,風習によっては,あいさつ程度で行われた場合もあり得ます。
あいさつ程度でこのような行為が行われた場合であったときには,それが直ちに夫婦共同生活の維持という利益や権利を侵害しているとまではいえないと判断されるおそれがありえます。
したがって,キスや抱き合うといった行為があったからといって,すべての案件が慰謝料の請求ができるわけではないことには注意をしておくとよいでしょう。
しかし、一般的な案件であれば、キスや抱き合うといった関係があった場合には、夫婦婚姻生活の平穏を害するとして一定の慰謝料請求が認められることがあり得ます。
実際の裁判においても、不貞行為として肉体関係は認められないものの、不貞類似行為や夫婦婚姻生活を害する不法行為があったとして、一定額の慰謝料が認められる場合が存在します。
(3)金額はあまり高額にはならない。
キスや抱き合うといった行為が違法な行為に該当して,損害賠償請求をできるとすれば,いったいどの程度の金額を請求することができるのでしょうか。
不貞行為に基づく慰謝料請求が100~300万円程度で推移することが多いことに対して,キスや抱き合うといった行為のみでは,不貞行為にまで及んでいないとして損害賠償金額としては不貞行為が認められている案件に比べて低額なものとなってしまうおそれがあります。
事案によって異なるものの30~50万円~100万円といった金額に収まってしまう場合が多いでしょう。
2 証拠が大切!
不貞行為といった水準が認められるかどうかについては証拠が大切な要素となってきます。キスや抱き合うといた行為しか認められないといった事案においても不貞行為の証拠が十分でないために,比較的な低額の判断となっておそれも存在します。
そこで,弁護士に相談し,現在集まっている証拠にはどれほどの価値があるのか,さらにこのような証拠がさればよいのではないかといったことを確認されるとよいでしょう。
天王寺総合法律事務所では,浮気・不倫の慰謝料を多数扱ってきた弁護士が所属しておりますので,この証拠で請求できるかどうか不安であるといった方はぜひご相談ください。
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大阪弁護士会所属。立命館大学法学部卒・神戸大学法科大学院卒。数多くの浮気不倫問題、離婚問題を取り扱っている弁護士。関西地域にて地域密着型法律事務所を設立。