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医療観察法の目的、入院とはどのようなものですか。

大阪地方裁判所のイメージ

1 医療観察法の目的

精神障害のために、違法な行為を行った場合には、医療観察法により手続きが取られる場合があります。医療観察法の正式名称としては、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律といいます。医療観察法1条において目的が定められており、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者に対し、その適切な処遇を決定するための手続等を定めるところにより、継続的かつ適切な医療ならびにその確保のために必要な観察および指導を行うことによって、その症状の改善およびこれに伴う同様の行為の再発の防止を図り、もってその社会復帰を促進することを目的としています。

2005年7月15日に施行されたものであり、心身喪失や心身耗弱の状態で他者に重大な加害行為を行った場合において、刑法39条により心神喪失,心神耗弱となったこと、不起訴処分、起訴されたが無罪判決が出された場合、有罪判決を受けたが執行猶予の裁判が確定した場合に、検察官によって申立てがなされた場合となります。

心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(目的等)
第1条 この法律は、
・心神喪失等の状態で重大な他害行為(他人に害を及ぼす行為をいう。以下同じ。)を行った者に対し、
・その適切な処遇を決定するための手続等を定めることにより、
・継続的かつ適切な医療並びにその確保のために必要な観察及び指導を行うことによって
・その病状の改善及びこれに伴う同様の行為の再発の防止を図り、もってその社会復帰を促進することを目的とする。
第2項
・この法律による処遇に携わる者は、前項に規定する目的を踏まえ、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者が円滑に社会復帰をすることができるように努めなければならない。

2 医療観察法の対象行為について

医療観察法2条1項各号によって対象とされる行為としては、下記のような行為が示されています。
① 現住建造物等放火(刑法108条)・同未遂(刑法112条)、非現住建造物等放火(刑法109条)・同未遂、建造物等以外放火(刑法110条)
② 強制わいせつ罪(刑法176条)・同未遂(刑法180条)、強制性交罪(刑法177条)、同未遂罪(刑法180条)、準強制わいせつおよび準強制性交罪、未遂罪(刑法178条、180条)、監護者わいせつおよび監護者性交等(刑法179条、180条)。
③ 殺人罪(刑法199条)、殺人未遂罪(刑法203条)、自殺関与罪、同意殺人罪(刑法202条)、未遂罪(203条)。
④ 傷害罪(裁量的申立て)
⑤ 強盗(刑法236条)、未遂罪(243条)、事後強盗罪(刑法238条)、同未遂罪。

傷害致死、強盗致死、強制わいせつ等致死傷などについては、結果的加重犯についても対象行為には含まれていると解されます。

3 対象行為をした者について不起訴処分、無罪判決、執行猶予を受けた者などが対象となります。

医療観察法2条2項によって対象者は下記のようになっています。
① 対象行為を行って、心神喪失または心神耗弱で不起訴処分となった者(2条2項1号)
② 対象行為を行って心神喪失を理由として無罪の確定判決を受けた者(2条2項2号)
③ 対象行為を行って心神耗弱を理由として刑が減軽され執行猶予の判決が確定した者(2条2項2号、ただし、懲役または禁錮の刑を言い渡し、その刑の全部の執行猶予の言渡しをしない裁判であって、未決参入をしてもなお執行すべき刑期があるものを除く。)

4 審判の申立ての流れ

わかりやすいポイント

(1)審判の申立て(医療観察法33条)

検察官は、被疑者が対象行為を行ったこと、心神喪失もしくは心神耗弱者であることを認めて控訴を提起しない処分があったなど、この法律による医療を受けされる必要が明らかにないと認める場合を除き宇、地方裁判所に対して、対象者を入院等をさせる旨の決定を申し立てることとなっています(医療観察法33条)。

申立てがなされた地方裁判所の裁判官は、速やかに申立てがあった旨を対象者および付添人(付添人がない場合は保護者)に通知をすることとなります。

裁判官は、鑑定質問を行い、鑑定入院質問いおいて、陳述の機会が与えられることとなります(医療観察法34条2項)。

(2)鑑定入院命令(医療観察法34条)

裁判官は、対象者について、対象行為を行った際の精神障害を改善し、これに伴って同様の行為を行うことなく、社会に復帰することを促進するためにこの法律による医療を受けさせる必要が明らかにないと認める場合を除き、艦隊その他医療的観察のために、審判による決定のあるまで対象者を入院させる旨を命じなければならないとされています。

この入院期間は、原則として、命令が執行された日から2か月を超えることができないとあされています。ただし、裁判所が必要と認めるときには、1か月を超えない範囲で延長決定ができます(医療観察法34条3項)。

(3)鑑定命令(医療観察法37条)

裁判所は、対象者が法律の定める処遇要件を満たすかについて、医師に鑑定を命じなければならないこととなります(医療観察法37条)。
鑑定事項としては、
① 対象者が精神障害者であるか否か、
② 対象行為を行った際の精神障害を改善し、これに伴って同様の行為を行うことなく、社会に復帰することを促進するために医療観察法により医療を受けさせる必要があるか否か
③ その精神障害は治療可能性があるものか否か
④ 社会復帰の促進を図るために、医療観察法による医療を受けさせる必要があるか否か
⑤ 甲維持の責任能力の有無について
などが鑑定されることとなります。

(4)カンファレンスの実施

申立てがあってから審判期日までに間に関係者が集まってかインファレンスが行われることがあります(医療観察法規則40条1項)。カンファレンスでは、裁判官、精神保健審判員、精神保健参与員、鑑定医、社会復帰調整官、検察官、付添人などが集まり、鑑定書や生活環境調査報告書の提出がなされることとなります。

(5)審判期日

審判は非公開でなされ、対象者に対して事実関係、病状等についての質問が行われることとなります。通常は、1日で終了し、審判の結果を踏まえて、入院決定、通院決定が行われることとなります。

5 終局決定の内容について

(1)対象行為が不存在の場合や完全責任能力がある場合には、申立却下がなされることとなります(医療観察法40条)
① 対象行為を行ったと認められない場合
② 心神喪失者及び心神耗弱者のいずれでもないと認める場合

(2)処遇決定(入院決定、通院決定)
裁判所は、鑑定を基礎として、かつ、鑑定結果に付された意見、対象者の生活環境を考慮し、入院を行うのか、通院を行うのか、医療観察法による医療を行わない旨の決定を行うこととなります。

① 対象行為を行った際の精神障害を改善し、これに伴って同様の行為を行うことなく、社会に復帰することを促進するために、入院をさせてこの法律による医療を受けさせる必要があると認める場合には、利用を受けさせるために入院をさせる旨の決定(入院決定)

② 入院決定の場合を除き、対象行為を行った際の精神障害を改善し、これに伴って同様の行為を行うことなく、社会に復帰することを促進するため、この法律による医療を受けさせる必要があると認める場合には、入院によらない医療を受けさせる旨の決定(通院決定)

③ 入院決定、通院決定にも当たらない場合には、おの法律により医療を行わない旨の決定を行うこととなります。

(3)抗告手続き

地方裁判所の入院決定に対して、2週間の抗告期間に広告手続きを行うこととなります。
① 決定に影響を及ぼす法令の違反
② 重大な事実の誤認
③ 処分の著しい不当があった場合には、抗告を行うことができます。

(4)入院処遇について

入院決定がなされると、原則として指定入院医療機関に入院して、医療、治療を受けることとなります。
入院期間については法律上は無制限とされており、対象行為を行った際の精神障害を改善し、これに伴って同様の行為を行うことなく、社会に復帰することを促進するために入院を継続させてこの法律による医療を行う必要がなくなるまで退院をすることができないことがあります。

指定医療機関の長は、入院の継続が必要であると判断した場合には、6か月ごとに、保護観察所の長に意見を付して、地方裁判所に対して、入院継続申立てをしなければならないこととなります(医療観察法49条2項)。

入院している対象者、保護者、付添人は、地方裁判所に対して、退院許可の申立てを管轄の地方裁判所に申し立てることとなります(医療観察法50条)。

弁護士は代理人として本人に面会を行い、本人の訴えを聞き取り、カルテ等を検討し、処遇の問題点を明らかにして、厚生労働大臣あての処遇改善請求書を提出することができるとされています(医療観察法95条)。

6 まとめ

医療観察法では、一定の重大な他害行為を行った者が、心神喪失、心身耗弱によって不起訴処分、無罪、執行猶予となった場合に、医療的な措置を行うことで再犯防止を行う制度であり、検察官の申立て、裁判所での審判を経て、入院といった流れが取られます。入院している対象者は、退院許可の申立て(医療観察法50条)、処遇改善請求(医療観察法95条)を行うことを弁護士に依頼できる場合があります。刑事事件などで弁護士へのご依頼をご希望される方はぜひお気軽にお問合せください。

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