〇 ご家族からの離婚相談をお受けできない理由
当事務所では、親御さんからの娘さん、息子さんの離婚紛争については法律相談をお受けしておりません。
離婚を行うことは、ご本人様にとってもとても大きな問題であり、ご家族として支援をされておかれたいとのお気持ちはよくご理解ができます。
これは、離婚を決断するかどうかということはご本人様の意思に大きくかかわってくるものであるかと考えられるためです。また、当事者でない方へのアドバイスは紛争を複雑化させるおそれがあります。
そこで、法律事務所でご本人様以外からの法律相談についてはお受けしておりません。
以下では、そうはいっても法律知識として知っておきたいこととして離婚の原因や考えておくべきことを記載しております。
離婚は当事者にとって大きな問題であり、財産関係など大きな変更を伴うものです。紛争性が高い案件については早い段階でご本人様により弁護士に依頼をされることをオススメ致します。
〇 離婚原因の有無
当事者で、離婚の合意ができるのであれば、離婚原因は不要です。一方で、離婚に合意ができない場合には、裁判所での離婚を求めていくためには離婚原因が必要となってきます。
裁判所上の離婚原因には、
① 不貞行為 配偶者のある者が自分の意思により配偶者以外の者と性的関係を結ぶことをいいます。いわいる浮気・不倫と言われる行為となります。
② 悪意の遺棄 正当な理由がないにもかかわらず、夫婦の同居や協力、扶助義務に違反をする行為をいいます。悪意といえるためには、単にこれらの事情を知っていることのみならず、夫婦関係を廃棄しようと企画して、これらの義務に違反する行為を言います。
③ 3年以上の生死不明 配偶者が生存していたことを最後に確認できたときから、3年以上の生死不明であった場合には離婚原因となります。失踪宣告との制度によっても婚姻関係を解消することはありえますが、普通失踪宣告では、7年の期間がかかります。また、失踪宣告では、宣告後に配偶者が生存していたことが判明した場合には失踪宣告の効果の取消しの申立てがなされ、婚姻解消の効果が覆滅してしまう可能性があります。そのため、失踪し、配偶者が生存していたとしても、婚姻関係を復活させない意図がある場合には、民法770条1項3号の事実を主張して離婚を求めていくことはあり得るでしょう。
④ 強度の精神病にかかり、回復の見込みが存在しないこと
配偶者が強度の精神病である場合で、回復の見込みがない場合には、離婚を求めていくことができる場合があります。もっとも、精神病を持っている配偶者を放置することは一般的にみても妥当ではないため、医学的見地から検討されることが必要となります。配偶者の今後の療養や生活等に対して具体的な措置を講じて、一定の見込みがなければ認められないこととなります。
⑤ その他婚姻を継続しがたい重大な事情
その他婚姻を継続しがたい重大な事情については、婚姻関係が破綻していること等を基準に判断がなされます。婚姻関係が破綻しているかどうかについては、客観的にみて婚姻共同生活が回復する見込みが存在しないか、主観的に婚姻生活を送る気持ちを喪失しているのかといった点が考慮されます。
ドメスティックバイオレンスなどは、婚姻関係が破綻していることを推測されるひとつの事情とは考えられます。しかし、精神的なDVなど証拠が残りにくく、ドメスティックバイオレンスだけで離婚が直ちに認められにくい場合はあります。別居などの他の実績を作りつつ、婚姻関係がもはや復活することはあり得ないことを示していくことが必要となるでしょう。
性格の不一致などは、離婚原因で述べられる大きなものですが、これだけで婚姻を継続しがたい重大な事情と認めらえることは難しいと判断されます。性格の不一致以外の婚姻関係を破綻に至らしめる具体的な事実を証拠として集めていくことが必要でしょう。
うつ病、アルコール依存症など、精神障害については、④の場合と同様にそれが存在するのみで直ちに離婚原因となるわけではありません。離婚後の生活について十分な補償手段を確保するなどを検討することが必要となってきます。
これらの各事実を基礎づける証拠関係を整えて、手段選択を検討していくこととなります。
〇 離婚手段の選択
離婚の手段としては、大きく協議離婚、調停離婚、裁判離婚があります。
協議離婚は、当事者の協議により離婚を成立させていく制度です。上記に述べた離婚原因がなくとも離婚をすることができるため、協議離婚を目指していくこととなるでしょう。
協議離婚では、子供の親権者を誰とするのかを定め、離婚届を提出すれば、離婚自体は簡易にできます。
もっとも、協議離婚でも検討すべき項目はいくつか存在します。
① 親権者の指定・監護についての指定
② 養育費
③ 子供の面会交流権
④ 財産分与
⑤ 慰謝料
⑥ 年金分割
等を協議しておくことが望ましいこととなります。
また、養育費が将来未払いとなってくる紛争も後を絶たないため、養育費などを定めるのであれば、公正証書にて協議書を作成することが必要でしょう。
調停離婚では、家庭裁判所に離婚調停の申立てを行い、調停委員という第三者が間に入り、離婚の協議を進めていくものです。離婚事件などの家事事件では、当事者の話し合いをまずなすべきとの考えて方から原則として、調停前置主義がとられています。
第三者である調停委員が入ることで、法的に妥当な解決につながりやすい部分はあります。一方で、あくまで公正中立の立場で、話し合いをまとめていくに過ぎないため、必ず公平な結論になっているかは不明なところがあります。弁護士などに相談をしながら進めていくことがより安全ではあります。
離婚訴訟では、家庭裁判所に訴訟により離婚を求めていくものです。訴訟手続きとなるため、弁護士などの専門家を入れて進めるほうがよい手続きと考えられます。
〇 離婚事件については、様々な書籍、サイトがあり、争点がないものはご本人らの話し合いで進めることができることも事実です。一方で、公正証書の作成や調停、裁判などの一定の法的評価を伴うものについては、弁護士に委任を行う、継続的相談を受けサポートを受けていくとよいでしょう。
大阪弁護士会所属。立命館大学法学部卒・神戸大学法科大学院卒。数多くの浮気不倫問題、離婚問題を取り扱っている弁護士。関西地域にて地域密着型法律事務所を設立。