子の引渡し、保全処分の流れはどのようなものとなりますか。
1 子の引渡しの方法とは
非監護親に子どもの連れ去りがあった場合には、子の引渡しを求めていかなければならないことがあり得ます。
そこで、この記事では、子の引渡しを求めておく方法、流れについて解説させていただきます。
子の引渡しを求めていく方法としては、
① 子の監護に関する処分として、家庭裁判所において子の引渡請求を行う方法
② 子の監護に関する処分を本案として、審判前の保全処分として子の引渡しを求める方法
③ 地方裁判所において人身保護法に基づく人身保護請求
④ 離婚訴訟に附帯する子の引渡請求の申立て、および保全処分
などといった進め方があり得るでしょう。
刑事案件として、未成年者略取、誘拐罪による刑事告訴を行い、事実上の子の引渡しを求めていくといった手段もあり得ます。
2 子の引渡請求、審判前の保全処分について
離婚が成立するまでの間には、どちららが監護権者となるか、子どもの養育を見守るのかが問題となります。
そこで、家庭裁判所では、子の監護者指定の調停、審判によって、監護権者を定めていくこととなります。
離婚前の場合には、離婚に至るまでの暫定的な処分として子の監護者を決定すると同時に子の引渡しが命じられることとなり、離婚後の場合には、親権者と定まった者から子の監護に関する処分として、子の引渡しを求めていくことになります。
家庭裁判所は、子の引渡しをすべきかどうかについては、
① 監護者としての適格性
② 子の意思
③ 監護の継続性
④ 母性優先
⑤ 兄弟姉妹の不分離
⑥ 父母の婚姻破綻についての有責性
⑦ 面会交流の許容性
⑧ 子の奪取の違法性
などを考慮して、判断がなされることとなります。
そして、調停について協議が進行している間にも子どもの引渡しが必要となることはありますので、子の監護に関する処分としての調停・審判の申立てとともに、保全処分として子の引渡しの仮処分を行うこととなります。
◆ 子の監護者の指定調停・審判について
(1)申立人
父、母、監護者
(2)申立先
相手方の住所地の家庭裁判所
当事者が合意で定める家庭裁判所
(3)費用
子ども1人につき1200円
連絡用の郵便切手
(4)申立書などの書類添付
申立書
未成年者の戸籍謄本
調停が不成立となった場合には、そのまま審判に移行し、監護者の指定がなされることとなります。監護者の指定については、親権者の前哨戦として機能することがあり、監護者となった者が親権者として認められることが多いでしょう。
3 保全処分とは何か。
保全処分とは、権利関係を保護するために、裁判所が確定的な結論を出すまでの間に、暫定的な処分を行うことです。
現在の事実状態が継続することで、本来の権利行為が妨げられないようにするために、緊急性が要求される案件で認められるものとなります。
申立人は、保全処分を求める事由を証明するまでは必要はありませんが、疎明をしなければならないとされます。
証明では、合理的な疑いを差し挟まない程度に真実らしいレベルが必要となりますが、疎明では、一応確からしいと推測されるレベルで足りますので、一定の証拠を示すことで対応することとなるでしょう。
① 「急迫の事情があるときに限り」
② 「債権者に生じる著しい損害又は急迫の危険を避けるためこれを必要とするときに」
に発せられることとなります。
保全処分については、迅速な判断を行ってもらうことができ、早期に手続きが進められていくこととなるでしょう。
保全処分では強制執行を行うことができ、即時抗告を行っても、執行停止となるわけではないため、一定の実効性がある手段となります。
子の引渡しを確保する手段としては、不履行の場合に金員の支払いを命じる間接強制による場合と子どもが低年齢の場合には直接強制が実施される場合があります。
4 監護者指定・引渡しの審判の流れについて
① 監護者指定の審判の申立てを行います。
② 審判の期日が開かれ、家庭裁判所調査官により調査が行われます。
③ 家庭裁判所調査官による調査報告書が提出されることとなります。
④ 双方について審判の機会が設けられます。
⑤ 審理が終結をして、審判が出されることとなります。
最終的には、裁判官が審判期日で聞き取った内容や家庭裁判所調査官により子どもとの面接、家庭訪問など)の結果などを踏まえてなされることとなります。ここで大切なものとしては、家庭裁判所調査官の報告書となってきます。
5 まとめ
子の引渡し、監護者を誰とするのかについては、両者の主張が激しく争われることがあり、直ちに紛争の解決が難しい場合があります。離婚については、親権、面会交流、養育費、財産分与、慰謝料、年金分割など様々な部分が問題となってきます。離婚問題に詳しい弁護士に相談を行い、今後どのようにして進めていくのかを相談、依頼を進めていくとよいでしょう。
大阪弁護士会所属。立命館大学法学部卒・神戸大学法科大学院卒。数多くの浮気不倫問題、離婚問題を取り扱っている弁護士。関西地域にて地域密着型法律事務所を設立。