破産を弁護士事務所に相談をするときにはどんな準備が必要?
□ どんなときに破産を相談をしたらよいのか
□ 破産とはどのような手続きなのか
□ 破産を弁護士事務所、法律事務所に相談をするときにはどんな準備をしていったらよいのか。
このコラムでは、個人で借金を支払うことができなくなり、破産を検討されている方に向けて、どのような準備をしていけばよいのかを解説させていただきます。
1 どんなときに破産を相談したらよいのか
弁護士などの専門家を入れた借金の整理を債務整理と呼ぶことがあります。
債務整理については、いくつかの手段があり、それぞれの借金の原因、財産の状況、家計の状況を踏まえて、適切な方針を選択していくことがあります。
個人の方が行うことができる債務整理にもいくつか種類があり、
① 破産手続 : 自由財産を除く破産手続時の始まった段階(開始決定時の財産)をお金に換えて、債権者に分配し、借金については免責を受けるという手続き
財産を清算しなければならない点は大きなデメリットですが、免責許可決定を得ることで借金を大幅に減額することができます。警備員、生命保険の外交員など失権などの制度がありますので、とれる状況であるかを弁護士に確認するとよいでしょう。
② 個人再生 : 借金の総額が5000万円を超えない場合に、法律で定める金額(財産を換価した場合の総額や可処分所得金額、借金から5分の1など一定の割合をかけた金額など)を3年程度で返済する再生計画を立て、計画的に弁済を行うことで借金を法的に整理する手続き
住宅ローンなどがあっても利用できる場合や破産で制限職種に該当する方、免責が難しい方が取ることができる手続きで借金を一定程度は減額できることにメリットがある手続きとなります。
③ 任意整理 : 債権者との交渉によって支払方法、支払金額を合意して、分割で支払っていく手続き
債権者としては、将来利息のカットなどの譲歩をしてもらえる場合がありますが、経済的事情によって変わってきます。
④ 特定調停 : 民事調停の一種で簡易裁判所の調停手続において当事者間で、合意を成立させて分割支払いを行っていくものです。自然災害による被災者の債務整理に関するガイドラインなどで利用することがありえます。
※ 自然災害ガイドラインを利用する場合には、要件を充足するのかを確認し、最も多額のローンを借りている金融機関などにガイドライン手続き着手の希望を申出、自然災害被災者債務整理ガイドラインの登録支援専門家に支援を依頼することとなります。
このうち、破産手続きを選択するためには、
① 破産法での支払不能の要件に該当するか
② 清算・処分しなければならない財産は何か、
③ 家計収支表から可処分所得はどの程度か
④ 自由財産として手元に残すことができる財産はあるか
⑤ 免責不許可事由となる事情がないか(ギャンブル、偏頗弁済、財産処分、虚偽情報による借入など)
⑥ 破産に伴う官報への公告、警備員などの資格の制限、信用情報機関への記載などの不利益を受けることができるか
⑦ 破産後に経済的な再建を果たすことができるか(浪費などを直すことができるか、生活態度などを改めていくことができるか)
⑧ 資料収集が可能か、誠実に裁判所に報告することができるか(申立てが誠実になされるものか、財産隠匿を行わないか)
の事情を考慮し、弁護士費用の支払方法を検討していくこととなります。
借金については支払いをすることができず、徐々に支払いが困難となっていく段階、リボ払いで金利だけを払い続けているのみの段階、支払が遅延し、債権者から連絡が来ている段階、裁判所から訴状が届いている段階、給与債権の差押え段階など時間がたつほど悪化していくことが多くあります。
そのため、最終段階に至ってから破産をするのかどうかを弁護士に相談をするよりも、借金の支払いが徐々に困難となり始めた時期、貸金業者から連絡が来るようになった時期には、専門家に相談し、債務整理をとるべきなのかを確認していくとよいでしょう。
2 破産とはどのような手続きなのか。
破産手続きと聞くと、最終的な手続きとしてとても怖いイメージを持たれていることがあります。しかし、手続きとして厳格なものである一方で、テレビやドラマほどの怖いことが伴うイメージとは大きく乖離している部分も存在します。
そこで、破産手続について簡単に流れを確認しておきましょう。
もっとも、自己破産の手続きについては、手続きの内容によって時間なども大きくことなっていきますので、詳しくは実際に相談をされて聞かれることがよいでしょう。
(1) 初回相談~受任まで
借金の整理の手続きでは、弁護士などの専門家に相談をされることをおすすめします。
住宅ローンがある場合など不動産の価値が問題となるケース、退職金や学生保険などの解約返戻金の金額が問題となるケースでは、最初の相談時には、財産関係、適切な方針の決定が難しい場合もあります。
そのような場合には、資料を集めて、再度面談を行い、方針を決定していくことになるでしょう。
もっとも、初回相談ですべての資料をそろえておくといったことは難しいため、最初の相談のときには、まずは、
① どの債権者からの借入をしているのか
債権者からの通知書、クレジットカードなどのカード類、通帳などの返済の履歴
② 収入と支出はどの程度か
預貯金の通帳などを持参し、簡単な家計収支表
③ 氏名、住所が確認できる公的証明書
などをご準備いただくとよいでしょう。
(2) 受任後には受任通知を送付し、債権の調査を行います。
弁護士などに専門家が入った場合には、事案などにはよりますが、受任通知を送ることが多くあります。受任通知を送ることで、貸金業者などからは一旦連絡がとまり、債権者から債権調査票が弁護士宛に送付されてくることとなります。債権者からの債権調査票については、早い会社ですと2週間程度で返答がくる場合がありますが、時間がかかる業者であると2,3か月程度かかってしまうケースもあります。
債権者からの取引履歴や債権調査票によって、現在どの程度の借金があるのか、過払い金が存在するのか、借金が発生してきた大きな原因は何なのかが判明していくことになります。
破産手続きでは、すべての債権者を対象とした手続きとなりますので、特定の債権者だけを除くことはできません。親族やご友人も含めてすべての債権者を調査することが大切となってくるでしょう。
(3) 財産の調査、報告書の作成、家計収支表の作成
破産手続きでは、裁判所に財産目録を提出し、財産を報告することが必要となります。
故意の財産を隠匿することは許されません。①預貯金、定期預金、②保険、家族分の保険、③社内積み立て・財形貯蓄、④賃貸借契約の敷金など、⑤貸付金、⑥退職金、⑦不動産、⑧自動車、⑨相続財産、⑩動産、⑪株式・有価証券などの各種の財産について証拠資料を準備して、裁判所などに提出できるよう準備をしていくことが大切となります。
報告書では、破産に至った事情や免責不許可事由の調査を行い、どうして破産に至ってしまったのか、免責不許可事由となる事情はないかを確認していきます。また、家計収支表を毎月作成し、光熱費について領収書などを確認できる形で保管していくことが必要となります。
とても速い方であれば、財産の調査、報告書の作成、家計収支表の作成で2~3か月程度で申立てができる方もおられますが、弁護士費用の積み立てなどで6~9か月程度の時間をかけて申立書を準備するケースも多くみられます。
(4) 申立書の提出、破産開始決定、同時廃止・破産管財の振り分け
裁判所に破産をするための申立てがきちんと整った段階で、裁判所に対して破産の申立てを行います。個人の破産手続きには、同時廃止と少額管財手続きの大きく2つでなされることが多く、振り分け基準に従って、同時廃止事件、破産管財事件との振り分けがなされます。振り分けの基準については、大阪地方裁判所の基準など各裁判所に応じてやや基準がことなります。弁護士の方などと面談などでよくお話をされて方針を決めていくとよいでしょう。
破産開始決定前に補正として追加の資料が求められることがあります。破産開始決定が行われると官報に公告がなされます。
(5) 同時廃止での免責手続き・破産管財での管財人面談、債権者集会、免責
同時廃止の場合には、清算すべき財産がないため、財産の換価、配当は行われず、免責を許可するのかどうか、免責手続へと移ります。
破産管財手続きの場合には、破産管財人という裁判所が選任された弁護士が財産の調査、借金の調査、免責不許可事由の有無などを調査し、管財人面談、債権者集会が行われるといった流れとなります。債権者集会については、一般の貸金業者などであったときには、あまり担当者が集会に来ることは少なく、破産管財人から報告書のとおりの報告がなされるのみといったことがあり得るでしょう。破産管財手続きにおいても異時廃止や配当手続などを経て、免責許可決定などが決定されることになります。
免責許可決定が出されることで、非免責債権以外の債務の支払を免れることとなります。
3 破産を弁護士事務所、法律事務所に相談をするときにはどんな準備をしていったらよいのか。
破産を弁護士事務所、法律事務所に相談をするときにはどのような準備をすべきなのかというと、借金の状況を把握できる資料、家計収支の把握ができる資料、財産を把握できる資料を持参できるように準備ができることがベストです。
しかし、これらの資料をすべてあつめて相談に臨むといったことは難しいため、まずは、カード類や債権者からの通知書から債権者が誰か、どのくらい借金があるのかを準備しておくとよいでしょう。
今後の方針次第ではありますが、預貯金や大きな財産については相談時に申告し、このような資料を集めてくださいと案内を受けるとよいかと思います。
借金問題については、あとになればあるほど適切な解決手段の選択肢が狭まっていくことはありますので、借金の返済に行き詰まりを感じている方、利息ばかり払い続けて借金が減らなくなっている方、リボ払い、リボ地獄で自転車操業のようになっている方などはできるだけ早期に法律事務所、弁護士事務所でご相談をされることをおすすめいたします。
大阪弁護士会所属。立命館大学法学部卒・神戸大学法科大学院卒。数多くの浮気不倫問題、離婚問題を取り扱っている弁護士。関西地域にて地域密着型法律事務所を設立。