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令和4年11月30日最高裁決定 間接強制の申立てを妨げる理由

令和4年11月30日決定が間接強制申立てでは、間接強制の申立てでは、長男が抗告人に引き渡されることを拒絶する意思を表明したことは、直ちに本件申立てに基づいて間接強制決定をすることを妨げる理由となるものではないとの判断がなされました事案がありますので、ご紹介します。

大阪地方裁判所のイメージ

1 平成31年4月26日 決定

子の引渡し事案において、間接強制の申立てが権利の濫用に当たるとされた平成31年4月26日決定が出されたことがあります。

平成31年4月26日決定では、

①引渡されることを拒絶し、呼吸困難に陥りそうになったために、執行を続けるとその心神に重大な悪影響を及ぼすおそれがあるとして執行不能とされたこと

②人身保護請求の審問期日において、引き渡されることを拒絶する意思を明確に表明し、子どもが相手方の影響を受けたものではなく自由意志に基づいてとどまっていること

などの具体的事情の下では、現時点において,長男の心身に有害な影響を及ぼすことのないように配慮しつつ長男の引渡しを実現するため合理的に必要と考えられる行為は,具体的に想定することが困難というべきである。このような事情の下において、本件審判を債務名義とする間接強制決定により,抗告人に対して金銭の支払を命じて心理的に圧迫することによって長男の引渡しを強制することは,過酷な執行として許されないと解される。

一方で、

令和4年11月30日決定では、間接強制の申立てでは、長男が抗告人に引き渡されることを拒絶する意思を表明したことは、直ちに本件申立てに基づいて間接強制決定をすることを妨げる理由となるものではないとの判断がなされました。

間接強制の申立てが権利の濫用と当たる場合となるのかには、具体的な事情の下で子の引渡義務の間接強制が過酷な執行といえるか、裁判機関の判断として子どもの自由意志に基づいて拒否していることが審判後の経過として明らかになっているのかなどを検討していくことになるでしょう。あくまで審判後の事情を考慮した監護者の変更の申立てや請求異議の訴えを行うことなどにより裁判機関の判断を求めていくといった対応などを行っていくことがしていくことになるようには思います。

大阪天王寺の不倫慰謝料弁護士
大阪弁護士の刑事弁護

2 令和4年11月30日 決定

最高裁 令和4年11月30日決定 子の引渡しを命ずる審判を債務名義とする間接強制の方法による子の引渡しの強制執行の申立てが権利の濫用に当たるとした原審の判断に違法があるとされた事例

令和3年(許)第17号 間接強制決定に対する執行抗告審の取消決定に

対する許可抗告事件

令和4年11月30日 第三小法廷決定

主 文

 原決定を破棄し、原々決定に対する抗告を棄却する。

 抗告手続の総費用は相手方の負担とする。

理 由

■ 事案の概要

抗告代理人阪本康文の抗告理由について

1 本件は、抗告人が、その夫である相手方に対して両名の長男を抗告人に引き渡すよう命ずる審判を債務名義として、間接強制の方法による子の引渡しの強制執行の申立て(以下「本件申立て」という。)をした事案である。

2 記録によれば、本件の経緯は次のとおりである。

抗告人と相手方は、平成24年に婚姻し、平成25年2月に長男を、平成27年10月に二男をもうけた(以下、上記の子らを併せて「本件子ら」という。)。

相手方は、抗告人及び本件子らと同居していたが、令和2年8月、本件子らを連れて転居し、抗告人と別居した。

和歌山家庭裁判所は、令和2年12月、抗告人の申立てに基づき、本件子らの監護者を抗告人と指定し、相手方に対して本件子らを抗告人に引き渡すよう命ずる審判(以下「本件審判」という。)をした。本件審判は、令和3年3月29日に確定した。

抗告人は、令和3年4月5日、本件子らの引渡しを受けるため、相手方宅に赴き、二男についてはその引渡しを受けた。他方、長男については、抗告人及び相手方からの約2時間にわたる説得に応ずることなく、抗告人の下に行くと相手方と会えなくなると述べたり、長男を抱えようとした抗告人を強く押しのけたりするなどして、抗告人に引き渡されることを強く拒絶したため、抗告人は、その引渡しを受けることができなかった。

その後、相手方は、抗告人に対し、長男が抗告人を怖がっていることから長男の引渡しについて具体的な提案をすることができないとした上で、長男と二男を面会させる機会を設けることを提案した。抗告人は、これに応ずることとし、相手方との間で、令和3年5月30日に長男と二男を面会させることを合意した。

相手方は、同日、長男を連れて上記の面会の待ち合わせ場所に赴いた。長男は、抗告人が上記待ち合わせ場所に来ることを知らされていなかったため、抗告人の姿を見て強く反発し、抗告人のことは全部嫌だなどと述べ、抗告人に抱かれることを拒否し、泣きながら相手方に対して相手方宅に帰ることを強く求めるなどした。

抗告人は、令和3年6月9日、本件申立てをした。

原々審は、同年7月13日、相手方に対し、長男を抗告人に引き渡すよう命ずるとともに、これを履行しないときは1日につき2万円の割合による金員を抗告人に支払うよう命ずる決定(原々決定)をした。

相手方は、同月26日、原々決定に対し執行抗告をした。相手方は、抗告の理由として、長男が抗告人に引き渡されることを明確に拒絶する意思を表示していること等からすれば、本件申立ては、間接強制決定をするための要件を満たさず、又は権利の濫用に当たる旨主張した。

原審は、要旨次のとおり判断して、原々決定を取り消し、本件申立てを却下した。

長男は、令和3年4月5日及び同年5月30日の2回にわたり、抗告人に引き渡されることを明確に拒絶する意思を表示しており、この意思は、現在における長男の真意であると認めることができるから、現時点において、長男の心身に有害な影響を及ぼすことのないように配慮しつつ長男の引渡しを実現するため合理的に必要と考えられる相手方の行為を具体的に想定することは困難というべきである。そうすると、本件審判を債務名義とする間接強制決定により相手方に長男の引渡しを強制することは、過酷な執行として許されないというべきであり、このような決定を求める本件申立ては、権利の濫用に当たる。

■ 決定の理由

4 しかしながら、原審の上記判断は是認することができない。その理由は、次のとおりである。

家庭裁判所の審判により子の引渡しを命ぜられた者は、子の年齢及び発達の程度その他の事情を踏まえ、子の心身に有害な影響を及ぼすことのないように配慮しつつ、合理的に必要と考えられる行為を行って、子の引渡しを実現しなければならないものであり、このことは、子が引き渡されることを望まない場合であっても異ならない。

したがって、子の引渡しを命ずる審判がされた場合、当該子が債権者に引き渡されることを拒絶する意思を表明していることは、直ちに当該審判を債務名義とする間接強制決定をすることを妨げる理由となるものではないと解される(最高裁平成30年(許)第13号同31年4月26日第三小法廷決定・裁判集民事261号247頁参照)。

そうすると、長男が抗告人に引き渡されることを拒絶する意思を表明したことは、直ちに本件申立てに基づいて間接強制決定をすることを妨げる理由となるものではなく、本件において、ほかにこれを妨げる理由となる事情は見当たらない。

原審は、上記意思が現在における長男の真意であると認められ、長男の心身に有害な影響を及ぼすことのないように配慮しつつ長男の引渡しを実現するため合理的に必要と考えられる相手方の行為を具体的に想定することが困難であるとして、本件申立てが権利の濫用に当たるというが、本件審判の確定から約2か月の間に2回にわたり長男が抗告人に引き渡されることを拒絶する言動をしたにとどまる本件の事実関係の下においては、そのようにいうことはできない。

したがって、本件申立てが権利の濫用に当たるとした原審の判断には、法令の解釈適用を誤った違法がある。

5 以上のとおり、原審の上記判断には、裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨はこの趣旨をいうものとして理由があり、原決定は破棄を免れない。そして、以上説示したところによれば、本件申立てが間接強制決定をするための要件を満たさない旨の相手方の上記主張に理由がないことも明らかであり、本件申立てに基づき間接強制決定をすべきものとした原々審の判断は正当であるから、原々決定に対する相手方の抗告を棄却することとする。

よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。なお、裁判官宇賀克也の補足意見がある。

■ 補足意見

● 補足意見

裁判官 宇賀克也の補足意見は、次のとおりである。

私は、原決定には共感できる部分があるものの、本件申立てが権利の濫用に当たるとまでいうことには躊躇せざるを得ないと考えるものであり、その理由について意見を述べておきたい。

1 記録によれば、本件において、相手方が長男の抗告人への引渡しに協力する姿勢が見られ、相手方が長男に対して抗告人への引渡しを拒否するよう殊更に働きかけている様子もうかがわれない。他方で、長男の言動に照らすと、長男は抗告人に引き渡されることを明確に拒絶する意思を表示していることは、原決定の認定するとおりである。

2 子の引渡しを命ずる審判を債務名義とする間接強制の申立てを権利の濫用に当たるとして却下した最高裁平成30年(許)第13号同31年4月26日第三小法廷決定・裁判集民事261号247頁と本件との間には、

・前者では、

・①間接強制の申立てに先立って引渡執行が行われた際、子が母に引き渡されることを拒絶し執行不能となったこと、

・②母が父を拘束者としてした人身保護請求の審問期日において、子が母に引き渡されることを拒絶する意思を明確に示し、請求が棄却されたことという事情があり、公的機関により、子の拒絶意思の明確性が確認されていたのに対し、

・本件では、そのような事情はないという相違がある。

・しかし、引渡執行の申立ても人身保護請求も監護権を有する債権者のイニシアティブで行われるものであり、債務者のイニシアティブで行うことはできないことに照らせば、公的機関により子の拒絶意思の明確性が確認されていることが間接強制の申立てが権利の濫用に当たるとされるための条件となるわけではないと考えられる。

・他方、民事執行法が、効率的かつ迅速な手続運営を図るため、裁判機関(権利確定機関)と執行機関(権利実現機関)を分離し、執行機関は原則として請求権の存在等の実体法上の問題については審査せずに執行を行い、実体法上の問題については、請求異議の訴えにより審理する仕組みを設けていること

・そのため、間接強制手続においては子の意見聴取や家庭裁判所調査官の調査は予定されていないことに照らすと、

間接強制の申立てが権利の濫用となるためには、債務者として引渡しのためにできる限りの努力を行うことは必要であると考えられる。

3 本件においては、相手方には、長男の抗告人への引渡しに協力する姿勢が見られるものの、

・長男の抗告人に対する強固な忌避感情を取り除く努力が十分であったとまではいえないと思われる。

そして、かかる努力を行っても、長男の抗告人に対する強い忌避感情を和らげることが期待できないと判断したときは、相手方は、長男の監護者の変更の申立てを行うことや間接強制決定自体を債務名義とする執行力の排除を求めて請求異議の訴えを提起することができる。

したがって、本件で直ちに間接強制決定が権利の濫用に当たるということには躊躇せざるを得ず、今後、上記のような努力がされることが望まれるところである。

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