成年後見制度の概要

成年後見制度の概要

成年後見制度の概要

1 後見制度とは

後見制度は、精神上の障害のため、社会生活を送る上で、判断能力が不十分な状態になってしまった人に対して、その判断能力に応じた財産管理などを受けることで、社会生活を援助する制度です。

精神上の障害とは、認知症、記憶障害、知的障害、精神障害など様々なものが含まれます。

認知症や統合失調症、知的障害、交通事故の頭部外傷により高次脳機能障害など判断能力が不十分な成年者を法律的に保護すること、援助することになります。

2 後見制度の種類

 後見制度の種類には、成年後見、保佐、補助の3種類があります。

 成年後見人には、    代理権が付与され、取消権を有します。

 保佐人、補助人には、 一定の行為の同意権、特定の代理権、取消権を有します。

(1) 成年後見 :精神上の障害により事理弁識能力を欠く常況にある者について、一定の者が後見開始の審判があったときに開始がなされるものです。

成年後見人が就任し、成年後見は、下記のような事務を担うことで、判断能力が不十分な者に対して財産管理などで支援ができる制度となっています。

 代理権限として様々な行為を行うことができます。

・生活に関する事務(生活費の計画的な支出など)

・療養看護に関する事務(介護、施設入所、医療等に関する支出など)

・財産の管理に関する事務(財産の管理、財産に関する法律行為、成年被後見人の行った行為の取消)

〇 成年後見人と成年被後見人との利益相反がある場合には、成年後見人の権限は制限され、被成年後見人の居住用不動産の処分については、裁判所の許可が必要となります(859条の3)

〇 日用品の購入その他、日常生活に関する行為については、同意や取消の対象とはなっていません。

(2) 保佐   :精神上の障害により事理弁識能力が著しく不十分である者について、一定の者の保佐開始の審判があったときに開始がなされます。

 保佐人は、

・民法13条1項に掲げる行為について、同意権を有し、

・許可なくして行われある場合には取消権を有します。

 民法13条1項には一定の行為が列挙されています。

① 利息・賃料などの法定果実の生じる貸付金・賃貸不動産について保佐人の同意が必要となります。

元本を領収し、又は利用すること。貸付金や賃貸不動産については、利息や賃料などを発生される貸付金の元金や土地・家屋などに賃貸借を受け取ることは運用することで得られる利息を受ける利益を失う点から、保佐人の同意を必要としました。利息、賃料自体は、被保佐人を害することはないため、同意なく受け取ることができます。

② 借金、手形の振出、準消費貸借、時効利益の放棄、消滅時効完成後の債務の承認などの借財を得ることや保証契約を締結することについて保佐人の同意が必要となります。

借財又は保証をすること。判断能力が著しく不十分な状態で、借入を行うことや保証を行うことは自己の財産を損なう危険性があります。そこで、新たな財産的負担となる借金、手形の振出、準消費貸借、時効利益の放棄、保証契約では保佐人の同意を必要とされます。

③ 不動産などの重要な財産処分については、保佐人の同意が必要となります。

不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。不動産 賃貸借契約の合意解除など、重要な財産処分について判断能力が著しく不十分な状態で手続きを進めることは生活環境を大きく変える危険性があるため、保佐人の同意により保護をしています。重要な財産には、多額の現金、金銭債権、有価証券、知的財産権なども含まれ、重要性の有無から判断されます。

④ 原告として訴訟行為をすることについては、保佐人の同意が必要となります。

  民事訴訟上の原告として、訴訟を追行する場合には、訴訟という権利を確定する法的手続きの重要性、複雑性から保佐人の同意を得ることが求められています。もっとも、民事訴訟の相手方となったしまった場合に、認否を行うなど反論を行わなければ不利益となるため、保佐人の同意なくすることができます。

  なお、訴訟上の和解をするためには、同意が必要となります。

⑤ 贈与、和解又は仲裁合意をすること。

  贈与、和解、仲裁合意をするためには、保佐人の同意が必要となります。裁判上の和解や仲裁合意は、裁判所の確定判決と同一の効力を有するなど効力の発生により財産的損失を伴うおそれがあるため、保佐人の同意という慎重な判断が求められています。

⑥ 相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること。

  相続を単純承認、限定承認をする場合や相続放棄、遺産分割協議を行うことは、財産について大きな処分となるため、保佐人の同意が必要であるとされています。単純承認とみなされる行為については、被保佐人がとくに承認行為をするわけではないため同意は不要です。みなし単純承認により不利益を受けないように注意をする必要があるでしょう。

⑦ 贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、又は負担付遺贈を承認する場合には、保佐人の同意が必要となります。

  贈与を受けることを拒否したり、遺贈を受けるのを拒否することについては保佐人の同意を得る必要があります。負担付贈与は、贈与を受けるにあたって一定の負担を受けることになりますので、保佐人の同意が必要となります。単位、負担の伴わない贈与・遺贈を受け取る場合には、保佐人の同意は不要と解されるでしょう。

⑧ 新築、改築、増築又は大修繕をすること。

 不動産について新築、改築、増築、大修繕を行うためには、大きな資金が必要となるため、判断能力が著しく不十分な状態でこれらの契約を進めていくことは危険性を伴います。そこで、これらの行為については保佐人の同意を必要としています。

⑨ 第602条に定める期間を超える賃貸借をすること。

  短期賃貸借

・樹木の植栽又は伐採を目的とする山林の賃貸借 10年

・前号に掲げる賃貸借以外の土地の賃貸借    5年

・建物の賃貸借                3年

・動産の賃貸借                6箇月

を超える賃貸借契約を締結することは、大きな財産処分と考えられるため、保佐人の同意を得ることが必要となります。

⑩ 前各号に掲げる行為を制限行為能力者の法定代理人としてすること。

  被保佐人が誰かの法定代理人となっている場合には、判断能力が著しく不十分であるとして、保佐人の同意を得ることが必要となります。

〇 代理権

同意権のみならず、特定の法律行為について代理権を付与することができます(民法876条の4第1項、2項)。代理権を付与する場合には、本人意向を大切にするために同意が必要となります。

〇 同意を得られない場合

 保佐人が被保佐人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときには、家庭裁判所は、被保佐人の請求により、保佐人の同意に代わる許可を与えることができます。

〇 保佐人と被保佐人との利益相反がある場合には、保佐人の権限は制限され、被保佐人の居住用不動産の処分については、裁判所の許可が必要となります(876条の5第2項、859条の3)

〇 日用品の購入その他、日常生活に関する行為については、同意や取消の対象とはなっていません。

③ 補助   :精神上の障害により事理弁識能力が不十分である者に対しては、一定の者が家庭裁判所に補助開始の審判を申立てることができます。

  補助の場合には、本人の判断能力は他の制度に比べては高いため、本人以外の者による保佐開始の審判や本人以外の者の請求による補助人の同意を要する行為の審判には、本人の同意を必要としています。

  補助人は、保園事務を行うにあたっては、穂補助人の意思を尊重し、かつ、その心身の状況および生活の状況に配慮しなければなりません。

  同意権は保佐人と同様の13条となることとなりますが、審判により同意を得なければならない行為には、一部に限ることができます。

〇 補助人と被補助人との利益相反がある場合には、補助人の権限は制限され、被補助人の居住用不動産の処分については、裁判所の許可が必要となります(876条の10第1項、859条の3)

〇 日用品の購入その他、日常生活に関する行為については、同意や取消の対象とはなっていません。

3 まとめ

 成年後見制度は、どのような権限があるのか、当人にとってどのような制度を利用することがベストであるなか難しい部分があるでしょう。一方で、重要な財産処分を防止することで、財産上の被害を受けることが防止でき、本人財産を守ることができる場合があります。そこで、判断能力が不十分になってきた場合には後見制度を利用することが考えられるでしょう。

 天王寺総合法律事務所では、成年後見申立て業務を取り扱っておりますので、成年後見など後見申立てをご検討の方はぜひ問い合わせください。

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