遺産分割で相続税はいつ手続きをすればよいのでしょうか。
遺産分割協議を行った場合には、相続税が発生するのか、相続税を納付するのかが問題となります。
遺産分割協議が成立しなかったとしても、相続税の申告期間は、10か月以内となりますので、未分割での申告を行い、のちに修正をしていくといったことがあり得るでしょう。
実際に相続税が発生していく場合には、税理士などに税務申告を依頼し、金額などを相談していくとよいでしょう。
1 遺産分割協議とは
被相続人が死亡した場合には、遺産分割前には、相続人での共有の状態となります。
そして、この共有状態を解消するために、共同相続人全員の協議を行い、誰に、どの遺産を分けていくのかを分けていく手続きが取られることとなります。
遺産分割については、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮して、分割が行われることとなります(民法906条)。
遺産分割については、法定相続分に従って分ける必要はなく、だれか一人に遺産を帰属する形で分けることも可能となります。
共同相続人間に協議が整わないとき、又は協議をすることができないとき、各共同相続人は、家庭裁判所において調停、審判を求めていくことができますので、最終的には、家庭裁判所により解決を行っていくこととなります。
2 遺産分割について時期はあるのか。
遺産分割については、遺言で遺産分割が禁止されている場合や審判などにより分割禁止がなされている場合を除き、相続開始後であれば、いつでも行うことができます。
したがって、遺産分割については、法律上の期間の制限はなされていません。
3 相続税の申告期間は10月以内
もっとも、相続税の申告については、【相続開始を知った日】の翌日から10か月以内に申告書を提出しなければならないとされています(相続税法27条1項)。
相続の開始があったことを知ったときとは、単純に被相続人の死亡を知った日ではなく、自己のために相続の開始があったことを知った日をいうのであるとされています(相続税法基本通達27-4)
相続税の申告期間内に遺産分割協議ができないときには、法定相続分に従って相続税の申告を行い、のちに遺産分割協議を成立したときには、修正申告、更生の請求をすることとなります。
課税価格の合計額が基礎控除額以下であった場合などには申告を受ける必要はありませんが、小規模宅地等の特定や特定事業用資産の特例、配偶者控除の適用を受ける場合には、相続税の申告を行わなければならないことがあります。
申告が不要であるのかを税務署、税理士に確認をしておきましょう。
遺産分割協議が期限内に成立していないとしても、申告期間が延長されるわけではありません。
そのため、期限内に遺産分割協議ができないとしても、民法所定の法定相続分に従って財産を取得したものとして申告納税を行うこととなります。遺産が未分割であった場合である場合には、小規模宅地等の減額の特例、配偶者の税額減額等の優遇規程を受けることができないこととなります(相続税法55条)。
4 申告手続きの流れ
(1)納税地について
相続税の申告書の提出先は、被相続人の死亡時における住所地を管轄する税務署となります(相続税法27条2項)。
申告書については、個別に作成提出がなされているものとされていますが、相続人が複数人いる場合には、共同して申告書を提出することができます(相続税法27条5項)。
(2)納付手続について
相続税の申告書には、被相続人のすべての相続人が明らかとなる戸籍謄本類の添付、住民票、遺言書、遺産分割協議書、印鑑証明書、預貯金、借入金の残高証明書、登記簿謄本、測量図、固定資産税評価証明書などの添付資料を用意します。
相続税の納付期間は、申告書の提出期間と同様となります。
納税は、金銭をもって行うことのほかに、税額に相当する金銭に納付書を添えて管轄の税務署または記入期間に納付することでも可能です。
相続税の申告書を期限までに提出している場合や相続税額が10万円を超えている、金銭で一時に納付するのが困難な場合で、延納税額に必要な担保を提供することで、分納を行うことができる場合があります。
(3)期限後申告について
国税通告法18条によれば、期限内申告内に提出すべき者で、期限内に提出できなかった場合には、税務署長の決定処分がなされるまでは、相続税の申告をすることができるとなされます。
期限後申告書を提出した場合には、無申告加算税は5%となり、決定が行われた場合には、納付すべき税額の15%(50万円を超える部分に関しては20%)の無申告加算税が課されることがあります。(国税通則法66条)
期限内に提出ができなかったことについて正当な理由が認められない場合には、刑罰が科されるおそれが存在します(相続税法69条)。
(4)修正申告・更生の請求について
申告書に記載しなかった財産や課税価格、税額等に誤った財産があった場合には、税務署長の更正決定があるまでは、修正申告書を提出することとなります(国税通則法19条)。
税務調査等により指摘を受けた場合には、税額を不足していたことに対するものとして、過少申告加算税(原則10%)を課される場合があることに注意が必要となります(国税通則法66条)。
また、課税価格、税額等に誤った場合に、申告した納税が過大であった場合には、税務署長に対して更正の請求をすることができます(国税通則法23条)。
更生の請求については、申告期限から5年以内に行う必要があります。
相続税法32条により、
① 未分割財産について民法上の法定相続分等に従って計算・申告されたばあいに、その後分割が行われ、当初申告と相続分の割合等が異なることとなったとき
② 認知、相続分の廃除または取消しに関する裁判の確定、相続回復、相続の放棄の取消し等により相続人に異動を生じたとき
③ 遺留分減額に基づき返還すべき、または弁償すべき額があったとき
④ 遺贈に係る遺言書が発見し、または遺贈の放棄があったとき
など、一定の後発的な事由が生じた場合には、5年を超えても、当該事由が発生したことを知った日の翌日から4か月以内に限り、更生をすることができるとされています。
5 遺産分割協議が成立しない場合でも相続税の申告を行う。
遺産分割協議については、早期に成立する場合もありますが、実際には成立まで長期間の時間がかかる場合があり得ます。税務署は、遺産分割協議が成立するかどうかについて関係はなく、延滞税などが発生することとなります。
そこで、遺産分割ができない場合には、未分割にて相続税の申告を行い、後日に遺産分割協議の成立後に、修正をすることとなります。遺産分割協議を行う場合など、相続が発生している場合には、10か月の期間に注意をするとよいでしょう。
大阪弁護士会所属。立命館大学法学部卒・神戸大学法科大学院卒。数多くの浮気不倫問題、離婚問題を取り扱っている弁護士。関西地域にて地域密着型法律事務所を設立。