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勝手に離婚届を出されました。離婚の無効を求めることはできないのですか。

勝手に離婚届を出されました。離婚の無効を求めることはできないのですか。

(想定事例)

夫には、浮気の疑いがあり、不倫に対して慰謝料などをきちんと支払わなければ離婚ができないとして離婚届は突っぱねてきました。

ところが、夫は、勝手に離婚届に出し、家から出ていって女性のもとに行ってしまいました。

このような離婚は有効なのでしょうか。

弁護士の回答

① 既に戸籍が変更されたいた場合には、協議離婚が無効であるとして、協議離婚無効の調停・審判を申し立てることとなります。

② 離婚届を提出される危険性がある場合には、不受理申出を行うことにより対応することが多いでしょう。

③ 調停・審判によって成立しない場合には、協議離婚の無効を求める訴訟を提起することとなるでしょう。

④ 離婚届を追認されない場合などには弁護士に相談をしていくとよいでしょう。

1 離婚届が形式的な要件を満たしていると役所は受理をしてしまう

離婚のうち、協議離婚は、

① 夫婦双方が離婚意思を有し、離婚に合意をしていること

② 離婚届が提出されたこと

が必要な要件となってきます。

原則的には、形式面でそろっている離婚届を提出したとしても、夫婦双方の離婚意思がないため、離婚は無効であるということができます。

しかし、離婚届の審査は、形式的な審査となり、市区町村役場の戸籍事務取扱者には、夫婦の双方が離婚意思を有しているのかの実質的な調査を行う権限がありません。

したがって、離婚届の形式的な記載があれば、役所はこれを受理してしまいます。

そのため、離婚届が勝手に提出されるおそれがある場合には、不受理申出を行っておくとよいでしょう。仮に提出されたとしも、戸籍の反映までには時間がかかります。自らの意思によらない届出あった場合には、市区町村役場の担当部門に申入れをすることで記載変更までに間に合う場合も存在します。

離婚届が出されてしまい無効を裁判所で認めて森、戸籍の訂正を申請することとなります。

たとえ虚偽の離婚届であっても、協議離婚無効の調停・審判、訴訟により対応をしなければならない点には注意が必要となります。

〇 不受理申出制度とは

離婚届は形式的な審査で、偽造された離婚届でも受理がなされてしまいます。

そこで、無断で離婚届が提出するおそれがある場合には、市区町村役場において、離婚届の不受理申出制度を利用し、6か月以内の一定期間の間には、離婚届を提出させないといったとりあつかいをすることができます。

なお、離婚届を偽造すること自体は下記のような犯罪となります。

・離婚届を偽造することは、有印私文書偽造罪名(刑法159条)、

・偽造した離婚届を提出することは、偽造有印私文書行為罪(刑法161条)、

・戸籍に記載された場合には、公正証書原本不実記載罪(刑法157条)

2 協議離婚無効の調停・審判、協議離婚無効訴訟について

(1)協議離婚無効確認の調停の申立てについて

離婚届がご自身の離婚の意思がないにもかかわらず提出された場合には、家庭裁判所に協議離婚無効確認の調停の申立てを行うこととなります。

当事者において合意が成立すれば、家庭裁判所は事実の調査を行い、審判を行います。

協議離婚の無効確認の申立ての手続きを行うこととなるでしょう。

ア 申立人

・協議離婚を行った当事者(夫または妻)

・協議離婚をした夫婦の親族等その他離婚無効を直接確認する履歴を有する第三者

イ 申立先

・相手方の住所地の家庭裁判所

・当事者が合意で定める家庭裁判所

ウ 申立書

申立書として、家事調停申立書として

(申立ての趣旨)

申立人と相手方との協議離婚は無効であることを確認するとの調停を求める。

(申立ての理由)

申立てに至る具体的な事情を記載します。

エ 標準的な申立添付書類(あくまで標準的な添付書類であるため、各事例によって追加で添付することがありえます。)

・申立人の戸籍謄本(戸籍記載事項証明書)

・相手方の戸籍謄本(戸籍記載事項証明書)

・住民票

・協議離婚届けの記載事項証明書

利害関係を有する者である場合には

・利害関係を称する戸籍謄本、利害関係を証する資料

を出していくこととなります。

オ 申立費用

・収入印紙 1200円分

・連絡用の予納郵券 (各家庭裁判所で定める金額を収めることとなります)

協議離婚の無効確認調停について合意が成立し、無効原因について争いがない場合には、協議離婚の無効確認を内容とする合意に相当する審判がなされることとなります(家事事件手続法277条)。

(2) 協議離婚の無効を求める訴訟について

当事者で協議離婚の無効について合意が成立しなければ、協議離婚の無効確認の訴えを、管轄する家庭裁判所に提起することとなります(人事訴訟法4条)。

協議離婚無効確認の訴えを提起するためには訴状を作成し、裁判所に提出することとなります。

訴訟の場合には、離婚の無効を主張する立証責任には、原告にあることとなりますので、離婚届出書の署名が異なること、無断で作成、提出されたことを立証していくこととなります。

審理では、協議離婚届の作成時・届出時の離婚意思の有無・意思能力の有無・追認の有無などが検討されることとなります。

協議離婚の無効確認を内容とする審判や判決が出されて確定した場合には、確定日から1か月以内に裁判所の謄本をつけて、戸籍の訂正を申請していくこととなります。

(3)協議離婚無効はどのような場合とは

協議離婚の無効原因については、典型的にみて、下記のような事案が考えられます。

① 夫婦双方にともに、離婚意思がなかったにもかかわらず、離婚届が提出された場合

② 夫婦の一方に離婚意思がないのに、他方が離婚届を提出された場合

③ いったん、夫婦双方が離婚に合意をしたが、離婚届け提出時に離婚意思を失っていた場合や、一方が意思不明になるか死亡していた場合がありえます。

離婚届を勝手に提出された場合には、原則として、離婚意思の合致がないため、一方に離婚意思がなければ、離婚は無効となります。

(4)無効な協議離婚の追認がなされる場合について

もっとも、離婚意思が欠いていた者は、無効な離婚届が出されたことを言ってこれを認める態度があった場合には、追認が認められる事案が存在します。

最高裁昭和42年12月8日判決では、夫が勝手に協議離婚届をした事案で、夫婦が昭和23年4、5月ごろ以降全くの別居状態にあり、事実上夫婦生活を営んでいないこと、右両名が昭和37年3月30日の家事調停において、上告人が昭和24年6月11日付の届出をもつてなされた無効の協議離婚を認めることを前提にして、離婚にもとづく慰藉料の支払を受ける旨の合意をした等の事実関係のもとにおいては、妻は調停の際に無効の協議離婚を追認したとの高等裁判所の判断を正当としました。

東京高裁平成20年2月27日判決では、妻が子の親権者を母として無断で離婚届を提出した事案について、

1 離婚については届出の記載時点で夫にいずれかが親権者であっても離婚するとの意思は認められない。

2 しかし、

① 平成18年3月、子らを頼むという趣旨の発言をして上で離婚無効等調停の申立てを取り下げたこと

② その後、現在に至るまで生活費等を送っていないなど、別居時様態を事実上容認する態度がうかがえること

③ 親権者指定の協議をしていたことにたいして強い不満を示しているものの、離婚についてやむを得ないとの意思を表明しており、親権者指定の協議をしていないことに対して強い不満を示しているものの、離婚そのものについては、やむを得ないものとしてこれを追認したものとして有効であると認めた事案がありました。

なお、親権者の指定について協議、合意があったとはいえないとして、追認をしたものと認めることができないとしました。

離婚後の態度などによって、無効な協議離婚が追認される場合がある点に注意が必要となるでしょう。

3 まとめ

離婚届を無断で提出された場合には、調停・訴訟などで無効確認を行っていかなければならず、対応が大変となっています。

協議離婚の無効の調停、訴訟を行う場合には、弁護士に相談、対応を行っていくをおすすめいたします。

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