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別居に至った場合夫名義の家から出ていかないといけないのでしょうか。

別居に至った場合夫名義の家から出ていかないといけないのでしょうか。

(想定事例)


夫と結婚し、マイホームを購入しました。私の父母が頭金を出したものの、不動産の登記名義は、住宅ローンを組んだ夫の単独名義となっていました。

夫の浮気が発覚し、女性と別れるように夫婦喧嘩になったところ、カッとなって夫は家から出ていきました。

何度かやり直すように家に帰ってくるようにLINEで連絡をしていたところ、しばらくは無視していたにもかかわらず、今お前が住んでいる家は俺も所有物なのだから出ていけといった連絡が来ました。

いくら夫名義の不動産であるからといって、不倫をした夫から家を出ていけといわれることが許されるのでしょうか。

弁護士の回答

① 不動産が夫名義であったとしても、婚姻関係が継続していることから、占有権限を有しているとして、明け渡す必要はないでしょう。

② 不動産については、財産分与において、婚姻期間中に築いた財産であるために夫婦共有財産としての性質と、妻の固有財産としての性質があるとも考えられるため、今後離婚になったとしても、財産分与として夫婦共有部分の1/2と、固有財産部分を主張していくことがあり得るでしょう。

1 配偶者には建物の使用について占有権限がある。

物を全面的かつ排他的な支配を及ぼすことができる権利を所有権といい、夫は、住宅ローンを組むと同時に、不動産売買契約を締結し、住宅の所有権を取得しているものと考えられます。

そして、建物所有者である夫は、所有権に基づく不動産の使用、収益ができ、別居に至った者に対して、明渡を請求できるかのようにも思えます。

しかし、婚姻中において建物の所有者でない配偶者は、他の配偶者の所有する不動産についき、夫婦の同居、協力、扶助義務(民法752条)に基づき、占有権限を有するものと考えられます。

この占有権限は使用貸借関係としての性質を有するものとして、特段の事情がない限りは、別居などにより夫婦関係が破綻していたとしても婚姻関係が継続している限りは、占有権限が存在すると解されるでしょう(東京高裁決定昭和31年7月16日)。

また、形式上は、不動産が夫婦の一方の単独名義であったとしても、婚姻中に2人で形成した財産としての側面と、妻の父母が頭金を捻出した部分については固有財産としての側面が存在する不動産といえます。

そのような場合には、名義が単独名義であったとしても、実質的な共有財産としての性質があるとして、財産分与の合意が成立するまで又は財産分与審判等が確定するまでは、占有権限があると解することができることがあるでしょ。

加えて、有責配偶者である夫が夫婦間の同居、扶助義務を怠り、一方的に家を出た上で、妻に対して妻の生活基盤を奪う形で、家の明け渡しを請求することは信義則上、許されないとも考えられるかもしれません。

したがって、夫が売買契約により所有権を取得し、不動産登記名義を有するとしても、妻には占有権限があるとして、明け渡す必要はないと考えられます。

2 財産分与について

 財産分与は、夫婦の協力によって築き上げられた財産を、離婚の際に清算を行うという制度です。清算の対象となる財産には、名義のいかんにかかわらず、夫婦の婚姻後に、夫婦の協力によって取得した財産を言います。夫婦の結婚後に購入したマイホームは、不動産して、夫婦の共有財産として考えられるでしょう。

 これは例えば、婚姻後の主たる収入は夫で、夫が住宅ローンを支払い続けているといった事情や名義が夫の単独名義であったとしても変わらないでしょう。

 一方で、財産分与の対象とならない財産として、夫や妻が各自・自由に処分できる財産で得た財産や夫婦の一方が相続や贈与によって取得した財産、婚姻前から財産は、特有財産として清算の対象とならない部分があります。

 ひとつの考え方として、不動産のうち、妻の両親が捻出した頭金部分については、妻が贈与のよって取得した財産であるとして、特有財産性があると主張することがあり得るでしょう。この場合には、不動産の全体の価格と、贈与を受けた金額部分を算出し、共有財産分を1/2として、固有財産部分を妻がそのまま受け取るといった清算の方法もあり得るでしょう。

 もっとも、名実ともに妻の特有財産であるとも言い難い部分が存在することあくまでの妻の財産からの寄与部分として考え、全体は共有財産として分与割合を変更していくといったこともあり得るでしょう。

 特有財産として支出したことの証拠がどこまで準備できるか、契約書、預貯金の通帳、当事者の金員の流れから認定をしていくこととなるでしょう。

3 離婚に至る場合には離婚慰謝料を請求しましょう。

浮気、不倫について証拠がある場合には、不貞行為は、不法行為に該当するものといえます(民法709条)。そこで、不法行為に基づく損害賠償請求権として、不貞慰謝料請求ないし離婚慰謝料請求を行っていくことが考えられるでしょう。


また、浮気が発覚したとしてカッなって家を出ていった行為やもし婚姻費用を支払わなくなったといった事情があった場合には、夫の行為は、正当な理由なく民法752条の同居・協力・扶助義務履行しない行であったとして、悪意の遺棄に該当する可能性もあり得ます。


離婚慰謝料請求については、100~500万円と事案の内容によって幅があるため直ちに算定は難しいものではありますが、婚姻関係の破綻が片方の責任にあるといえる場合には一定の金額を請求できる可能性が高いでしょう。


したがって、今後、離婚を行う場合には、離婚慰謝料として、不貞慰謝料部分と悪意の遺棄についての慰謝料部分の請求をしていくこととなるでしょう。

4 婚姻費用分担調停の申立てを行いましょう。

 
 夫婦婚姻生活が続いている間は、夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻かれ生ずる費用を分担することとなっています(民法760条)。婚姻費用については、いつから請求されたかがわからない部分があるため、できるだけ早期に婚姻費用分担の調停を申し立てておくほうがよいでしょう。

 婚姻費用については、それぞれの収入を認定し、婚姻費用養育費算定表(令和元年に裁判所が新しい算定表を公開しています)を使用し、一定の金額を算定していくこととなるでしょう。夫婦の源泉徴収票や課税証明書を準備しておくとよいでしょう。

5 まとめ

 離婚や別居に至るケースには様々なケースがあり得ます。そこで、適切な対応を行っていかないと不利益を被るおそれがありますので、ぜひ早期に弁護士に相談をしておくとよいでしょう。

 天王寺総合法律事務所では、離婚問題、離婚相談に取り組む弁護士が所属しておりますので、離婚について弁護士の援助を得て進めておかれたい場合には、ぜひお気軽にご相談ください。

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