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離婚するときに退職金を財産分与でもらうことはできるのでしょうか。

離婚するときに退職金を財産分与でもらうことはできるのでしょうか。

1 想定事例


 24歳で結婚し、56歳の今に至るまで、夫と結婚生活を続けてきました。昔から浮気癖が強く、子どものためと思って我慢をしてきましたが、子どもが成人し、二度としないと約束した浮気を再びしていることが判明しました。子どもの私にもう我慢しなくてよい、幸せになってほしいと応援をしてくれています。夫は、同じ会社で勤務しており、大きな会社で勤務しているため、退職金があると思っています。しかし、離婚を経験した友人から、退職金は今は貰っていないと半分に分けられないのではないかといわれました。退職まで残り9年となり、退職まで待った方がよいかを悩んでいます。精神的に苦しいため、これ以上一緒には一緒にいたくないとも思っているのでどうしたらよいのでしょうか。

2 弁護士の回答

 他の財産により退職金分の財産分与を受けられるかどうか、経済的なメリット、退職金分についての回収可能性なども考えて離婚を検討することとなるでしょう。
 どうしてもお気持ちが苦しい部分があるのであれば、退職金について将来受領する可能性が高いとして、退職金額を計算し、分与を受けることができる可能性もありますので、離婚を検討されることをオススメ致します。

3 離婚に向けての準備について

 離婚に向けては、様々なことを準備しなければなりません。
 大きくわけて、子どものこと(親権、面会交流)、お金のこと(財産分与、慰謝料、年金分割、婚姻費用、養育費)、今後の生活の設計(離婚後の住居、収入、生活)についてを考えておかなければなりません。すべてを計画どおりに進めることは難しいですが、今後の生活設計やお金のことに一定の見通しがあると選択肢が広がっていくため、弁護士と相談するなどして準備をしておくことが大切となるでしょう。
 今回は、お子さんが成人しているため、親権や面会交流はあまり問題とはならないでしょう。そこで、財産について、特に退職金についてどのようにしていくべきかを考えていきましょう。
全体の財産、今後の生活のデザインを考えて離婚を検討していきましょう。

① 財産分与について

 財産分与とは、夫婦共有財産の清算の側面が最も大きなものとなります。他に扶養的財産分与、慰謝料的財産分与といった方法もあります。しかし、これらの財産分与については、協議離婚、調停離婚の内容として合意ができる場合にはよいのですが、すべての事案で認められるわけではありません。そこで、夫婦共有財産の金額はいくらなのか、それらを寄与割合で検討していくといった観点で考えるとよいでしょう。

② 慰謝料について

 慰謝料請求については、不貞行為がある場合やDV(ドメスティックバイオレンス)がある場合には、不法行為に基づく賠償請求権(民法709条)によって損害賠償金を受け取ることができる場合があります。慰謝料を受け取るためには、証拠と損害がどの程度のものとなるかと検討しておきましょう。

③ 年金分割について

 年金分割は、配偶者の年金の報酬比例部分の2分の1を分割する(3号分割)や夫婦の合意により報酬比例部分を分割する(合意分割)といった形で分割を行います。これは年金額を分割するわけではないが、加入期間の報酬比例部分を分割できるため将来受け取る年金を多少増やしていくことがあります。

④ 今後の生活設計を立てておきましょう

 離婚は多かれ少なかれ、生活関係に大きな影響を与えます。そこで、今後の生活をどのようにしていくのかを考えておくことが大切です。専業主婦であった場合には、今後の収入、日々の生活をどうするのかを検討しておきましょう。どうしても仕事をみつけることが難しい場合には、社会保険制度、社会保障制度などを利用して生活再建を目指していくこととなるでしょう。

4 退職金についてはどのように財産分与となるのか。

 退職金については、退職時について発生するため、現段階では、将来受け取るものであるため、現段階では現実化しているお金ではありません。

そのため、将来退職金を受けることが確実ではないとして、退職金は財産分与の対象とならないとの考え方があります。 退職金を財産分与としては扱わないという裁判例も一定程度存在します(東京高裁昭和61年1月29日判決など)

 しかし、退職金の性質には、給料の後払い的性格も存在します。日々の給料については、夫婦共同生活の協力によって得られたお金であり、退職金も夫婦共同生活を営むことができたからこそ積み上げることができた財産ということができるでしょう。そのため、退職金についても財産分与の対象と考えられるケースが多いでしょう。
 
 もっとも、会社も継続的に存在するかは不明であり、あまりに退職までの期間が長すぎる場合には、退職金を財産分与の対象とすべきではありません。

 そこで、近い将来に退職金を受給し得る蓋然性があるため、財産分与の対象となるでしょう。将来に受給する蓋然性があるかどうかについては、定年退職までの期間や会社の規模、退職金の性質や勤務先の経営状況、勤務年数などを総合考慮して決定することとなります(東京地判平成11年9月3日)。退職年数が近ければより退職金を受け取れる可能性が高まる要素とされるでしょうし、会社の規模が大きいことや退職金規程が整備されていて客観的に算定ができること、会社の経営状況がよいなどの事情によって退職金をもらえることの確実性が高いかどうかを検討しておくとよいでしょう。

 なかなか会社の状況を把握して、退職金がでるかどうかを判断することは難しい部分がありますが、家庭裁判所において財産分与の対象となることを弁護士を通じて主張、立証をしていくとよいでしょう。

5 退職金の分け方について

 退職金については、将来に受け取る財産であるため分け方には複数の在り方があります。

① 定年退職時の退職金から、別居・離婚分などの夫婦の寄与がない退職金分を差し引き、中間利息を控除して金額を算定する方法

② 別居又は離婚時に退職金額を算定し、婚姻期間分を対象財産とする方法

③ その他一切の事情として他の財産分与などを踏まえて金額を算定する方法

④ 将来退職金を受け取ったときに受け取る合意をすること

などがあります。将来退職金を受け取るときに受領する方法の場合には、回収できないリスクを伴うことなるため、可能な限り離婚時に現金などとして受け取る方法や他の財産分与と清算をしていくとよいでしょう。

6 まとめ

 具体的な離婚や財産分与については、各案件によって異なる部分があります。弁護士に相談し、離婚協議、調停を行っていくとよいでしょう。天王寺総合法律事務所では、家事事件については、対象事件として弁護士が取り扱っておりますので、ぜひお気軽にご依頼、お問い合わせください。

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