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離婚後に親権者が児童虐待をしていることが分かった。どのように対応すれば?

離婚後に親権者が児童虐待をしていることが分かった。どのように対応すれば?

令和3年には、18歳未満の子どもが親がなどの保護者からの児童虐待を受けたとして児童相談所に相談をしてきたケースが過去最多といったといった報道がなされています。新型コロナウイルスなどとの関係性はわかりませんが、児童虐待が深刻な状況となっている状態といえるでしょう。

離婚紛争においても、離婚をした後に、元配偶者が子どもに対して暴力を振るっているなど児童虐待が発生していると思われるケースがあります。
このような場合には、子どものためにできるだけ早期に退避先を見つけるなどの必要がある場合があり得るでしょう。

そこで、このページでは、離婚後に、児童虐待があった場合にどのような対応を行うことができるのかを主として解説をさせていただきます。

1 児童虐待とは何か。

児童虐待とは何かを指すのかをまず確認しておきましょう。

児童虐待の防止等に関する法律第2条によれば、児童虐待とは
保護者がその監護する児童について行う下記のような行為とされています。
① 身体的虐待 : 児童の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること
② 性的虐待  : 児童にわいせつな行為をすること又は児童をしてわいせつな行為をさせること
③ ネグレクト : 児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置、保護者以外の同居人により、身体的虐待、性的虐待及び心理的虐待と同様の行為の放置その他の保護者としての監護を著しく怠ること
④ 心理的虐待 : 児童に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応、児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力その他児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと

ここでの児童とは、18歳未満の未成年者をいいます。

離婚事件などにおいて、配偶者には暴力が振るっているが、子どもには暴力を振るっていないので子どもに虐待行為はないとの主張がなされることがありますが、児童が同居する家庭において配偶者に暴力を振るっている場面が存在すること自体が心理的虐待として該当することとなるでしょう。

2 児童相談所による一時保護による対応

離婚をしたのちに、元配偶者からの子どもに対する虐待があった場合については、どのような対応を行うことができるのでしょうか。

児童福祉法33条では、児童虐待が疑われる事案においては、一時保護をとることができる制度を設けています。

そこで、虐待が疑われる場合には、児童相談所に通告をすることで、現在の環境からの一時的に子どもを退避させるといったことが必要な場合があるでしょう。

(1)一時保護自体は最大2か月の短期的な制度

一時保護とは、短期間の緊急的の分離措置として、一時保護所、児童養護施設、民間のシェルターなどを利用して行われます。
これは、特別の裁判手続きなどを経ることはなく、虐待の疑いなどがある場合には、保護者の同意がなく行うことができるものです。

虐待によって子どもの身の安全を守るために、速やかに保護を行い、虐待などの危険から離れさせることが重要であるとの見地から、児童相談所が虐待の通告を受け、通告者からの情報の整理、緊急受理会議による方針の決定、児童相談所職員により子どもの安全の確認、子ども本人や保護者への面積、場合によっては警察への援助を受けての立ち入り調査などを行い、緊急的な保護を行うこととなります。

一時保護の期間は、2か月を超えてはならないのが原則です。
児童相談所長は、必要があると認めるときには、引き続き一時保護を行うことができるとされています。

そして、一時保護によって、子どもや保護者の調査、環境調整ができた場合には、子どもを配偶者のもとに戻すといったことがなされます。

なお、一時保護は子どもを一時的に保護し、虐待などを防止する効果がありますが、親権者を変更していくためには、親権者変更など民事上の手続きを行う必要があります。

児童福祉法33条第1項 児童相談所長は、必要があると認めるときは、第二十六条第一項の措置を採るに至るまで、児童の安全を迅速に確保し適切な保護を図るため、又は児童の心身の状況、その置かれている環境その他の状況を把握するため、児童の一時保護を行い、又は適当な者に委託して、当該一時保護を行わせることができる。

(2)長期的な分離を行う制度

児童相談所が児童を一時保護した後、保護者のもとに直ちに子どもを返すことが相当でない場合には、子どもを児童養護施設に入所させる、里親に委託する等の措置をとることができます(児童福祉法27条1項3号)。
もっとも、長期的な処遇の場合には、親権者又は未成年後見人の意思に反して行うことはできません(児童福祉法27条4項)。

そこで、子どもの親権者等の意思に反する場合には、都道府県知事又は児童相談所長の申立てにより、家庭裁判所の承認を得ることとなるでしょう(児童福祉法28条)。

児童福祉法第27条第1項 都道府県は、前条第一項第一号の規定による報告又は少年法第十八条第二項の規定による送致のあつた児童につき、次の各号のいずれかの措置を採らなければならない。
3号 児童を小規模住居型児童養育事業を行う者若しくは里親に委託し、又は乳児院、児童養護施設、障害児入所施設、児童心理治療施設若しくは児童自立支援施設に入所させること。
・・・
4項 第一項第三号又は第二項の措置は、児童に親権を行う者(第四十七条第一項の規定により親権を行う児童福祉施設の長を除く。以下同じ。)又は未成年後見人があるときは、前項の場合を除いては、その親権を行う者又は未成年後見人の意に反して、これを採ることができない。
児童福祉法28条1項 保護者が、その児童を虐待し、著しくその監護を怠り、その他保護者に監護させることが著しく当該児童の福祉を害する場合において、第二十七条第一項第三号の措置を採ることが児童の親権を行う者又は未成年後見人の意に反するときは、都道府県は、次の各号の措置を採ることができる。
一 保護者が親権を行う者又は未成年後見人であるときは、家庭裁判所の承認を得て、第二十七条第一項第三号の措置を採ること。

長期分離の期間は、2年間が原則ですが、2年間の分離で家庭に戻ることが困難である場合には、家庭裁判所の承諾を得て、その期間を更新するといったことになります。

(3)親権者でない場合には児童相談所は詳しい事情は教えてはくれない点に注意

既に離婚をしており親権者でない親御さんからすれば、子どもが現在どのようになっているのかは非常に気になることはではあります。

しかし、親権者でない親から児童相談所に対して虐待の疑いがあることを通告をすることはできたとしても、一時保護をされたかどうか、詳しい情報を教えてもらうことはできない点には注意が必要となるでしょう。

3 親権者変更の調停・審判について

親権者が父母の一方に決まった後であっても、虐待などの事実があったために、子どもの利益のために必要がある場合には、親権者変更の申立てを行うことが考えられます。

親権者変更の場合には、必ず家庭裁判所での調停・審判をしなければなりません。

(1)申立手続き

親権者変更申立てができるのは、子どもの親族(民法819条6項)です。

管轄裁判所は、
【調停】  相手方の住所地を管轄する家庭裁判所 
又は 当事者が合意で定める家庭裁判所
【審判】  子の住所地を管轄する家庭裁判所

【申立書】 親権者変更の申立てを求める旨の調停申立書
【添付書類】戸籍謄本など
【申立費用】収入印紙 子ども1名につき1200円
      各家庭裁判所が定める予納郵券を収めます。

(2)親権者変更の判断基準とは

親権者変更の判断基準は、明文で定めがあるわけではありませんが、子どもの福祉、利益となるのは誰が親権者となるのかといった観点から判断されることとなります。
監護の継続性、子どもの意向、子どもの年齢、親の生活状況、監護意欲、監護補助者の有無などが考慮されていうこととなるでしょう。

家庭裁判所では、父母の話を聞くと同時に、家庭裁判所調査官などが、未成年の現状の調査、報告などを行います。
必ずしも離婚後に証拠を集めきることが難しい面がありますが、虐待の通告に至る経緯、証拠をきちんと弁護士などを通じて家庭裁判所に提出を行っていくとよいでしょう。

家庭裁判所調査官報告書などを参照に、双方での話し合いでまとまった場合には、調停が成立し、困難な場合には、審判に移行がなされ判断が行われます。

4 施設入所措置の解除、停止について

親権者の変更がなされたとしても直ちに、施設で保護を受けている子どもが帰ってくるわけではありません。
親権者変更の手続きと児童福祉法での行政での手続きは異なるものであり、施設入所措置が取られている環境から親権者のもとに子どもを返すことが子どもの福祉にかなっているのかどうかの判断がなされることとなります。

親権者変更によって親権を取得したにもかかわらず、子どもを返してほしいとの請求権がない点にはもどかしい部分がありますが、虐待を受けた子どもに対して更なる危険が及ばないようにするために慎重な判断がなされているといわれています。

保護者等と面会、電話、手紙などで交流をもちつつ、虐待などを受けていた子どもを家庭に返すことができるのかについて判断を求め、児童福祉施設等の長や児童相談所長が施設入所措置の解除、停止が取られるよう働きかけを行っていくこととなるでしょう。

5 まとめ

離婚した元配偶者が子どもに対して虐待を行っている疑いがある場合には、弁護士、児童相談所などと相談しておきましょう。
面会交流などを通じて子どもの様子を知ること自体がこのような事態を防ぐことになる場合もあり得ます。
子どもの生命、身体などを守るためにいかなる手段が適切なのか、子どもの福祉にとって最も適切なのはなんなのかを考えて行動をしていくとよいでしょう。
親権者変更などの手続きが必要な場合には、お近くの弁護士に相談をされることをオススメ致します。

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